「任意売却物件」の問題点(その2、ローンの利用)

※昨日投稿した内容の続きです。

 任意売却物件であれば不動産物件を安く購入できるとして、金融機関に相談する方がいらっしゃいます。ところが、金融機関であればいつでも任意売却物件を在庫しているわけではありません。それに当該金融機関が抵当権者である物件に関する情報しかないことがほとんどです。

 数多くの情報を集めたいとして複数の金融機関を訪問する方がいらっしゃいますが、ほとんどは門前払いです。ローンの利用を希望される方が大半であるからです。

 「銀行を訪問し、紹介してもらった任意売却物件をローンで購入した」という内容がブログ等に散見されます。しかし、任意売却物件をローンで購入するためには以下の条件を満たしている必要があります。

・購入者が何らかの事業を展開しており、当該金融機関から事業用の融資を受けて長年返済している。
・金融機関の営業担当と長年の付き合いがあり、購入者および営業担当が相互に信頼している関係である。
・購入者に十分な資力があり、事業が順風満帆であることを金融機関が把握している。
・不動産競売開始が決定されてから不動産競売が実施されるまでに、ローン審査を行える日数がある。
・金融機関が提示する融資条件(利率が高めかつ短期間になりがち)を承諾できる。

・購入しようとする不動産物件に順法性(建ぺい率、容積率、建築確認)に関する問題がない。

 間もなく不動産競売が実施される物件ではローン審査を行う時間的余裕がないことがほとんどです。原則として購入代金を一括で支払える方でないと相手にしてもらえないのが現状です。

 また、最後に書いた「順法性」も大きな問題です。建築確認申請や完成検査が未了である物件、および無届で増改築した物件が問題になります。

 特に多いのは増改築を行っているのに建築確認申請および完成検査が未了の中古戸建住宅です。増改築を行う際は建築確認申請および完成検査が必要です。しかし、これらが未了の中古戸建住宅は順法性に問題がある物件と見做されます。

 増改築の際に工務店が建築確認申請に関する説明を行わない、または「不要である」と説明することがよくあります。これは宅地建物取引業免許を取得していない工務店が多く、建築確認申請等の重要性を認識していないことによります。

 一部のノンバンクを除き、金融機関は順法性に問題がある物件の購入に対する融資を行いません。このため、任意売却物件とされている中古戸建住宅の大半は、現金一括による購入が出来る不動産会社が購入します。

 その後は違法な増改築箇所を取り壊す、または建物の解体等を行い、順法性を担保した上で市場流通価格により再販します。