不動産購入、現地確認を怠ったために大損害(その1)

相談事例です。

※相談者のプライバシーに配慮し、事案を多少修正した箇所があります。

相談内容

 1棟ものの新築賃貸マンションを建てられる土地を探していましたが、希望するエリアではなかなか見つかりません。不動産会社に相談したところ、築古の安いマンションを購入し、取り壊して再建築することを勧められました。
 その後、その不動産会社から築50年の古い1棟もの賃貸マンションを紹介されました。利点はJRの特急列車が停車する駅から至近であり、現況の建物における部屋数が約30室と多いことです。 
 購入を直ちに決断し、現金一括で購入し、所有権移転登記も済ませました。「どうせ近いうちに取り壊して再建築するのだから必要ないだろう。」と考え、現地の訪問及び確認はしませんでした。また、入居者が締結している賃貸借契約の引き継ぎは、不動産会社に委任しました。
 最近、再建築の計画を立てました。建築士に建物の図面作成を依頼したところ、「この土地の間口は2mしかありません。居宅であれば建築できます。しかし、賃貸マンションは条例により間口が3m以上必要なので賃貸マンションは建築できません。」と言われました。
 現地を訪問して確認したところ、間口は2mしかありません。どうしたらよいでしょうか。

 相談者は、マンションの再建築が認められない土地なのに、再建築が可能であると誤認して購入しました。

 建築基準法は、居宅(戸建住宅)を建築する際は間口を2m以上にしなければならないことを規定しています。この規定は不動産業に携わらない方でも知っている方が多いです。

 ところが、賃貸マンションを建築する場合に必要な間口も2mであると誤解している方がいらっしゃいます。都道府県または市区町村が定める条例が、より大きい間口が必要なことを定めている場合があります。必要な間口は建物の規模や部屋数により細かく定められていることが多いです。一定の規模を超えるマンションやアパートは間口を大きく取れる土地でないと建築確認申請ができません。

 相談者の土地にマンションを建築する際に必要な間口は、県の条例で3m以上と定められていました。隣接する建物の位置関係により、間口を広げることは不可能な状態でした。これでは建築審査会に特別な許可を求めることもできません。

 「現況の建物を取り壊して再建築するので現地確認は不要」と安易に考える方がいらっしゃいます。しかし、購入前に接道状況を必ず確認することを強くお勧めします。売買契約を締結して物件が引き渡された後に売買契約を取り消すことは困難です。

 仲介した不動産会社に損害賠償を請求することは一応可能であり、裁判を提起することも可能であると思われます。しかし、裁判では「現地確認をせず、条例の確認を怠った買主に大きな落ち度がある」され、損害額全額の賠償は受けられないと考えられます。

 どの不動産物件でも、売買契約締結前の現地確認は必須であると言えます。