リースバックの罠

 ダイヤモンドオンラインの記事から引用します。

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不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意
沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント
2023.8.31 15:00

~略~

親のすみかが奪われる!?リースバックに潜む大損リスク
 生まれ育った実家や、両親のすみかを失っている人が急増中だ。広告で見ることも増えている「リースバック」という不動産取引が原因で、国土交通省や国民生活センターが注意喚起を行っている。

 お盆は過ぎたが、もしこれから実家に帰る機会があれば、このリースバックには気を付けるよう親に話しておいた方がいい。

 リースバックとは、自宅(持ち家)を不動産事業者に売却して資金を得た一般消費者が、賃貸契約を結んで同じ物件に住み続けられる仕組みだ。高齢者などから需要があり、最近は戸建て住宅のリースバックを手掛ける不動産事業者が増えている。

 だが、この手法で得られる売却代金は、一般的な取引よりも大幅に安いことが多い。それどころか、賃貸契約後の家賃は相場よりも高くなりがちだ。ビジネスそのものは現行法では問題ないのかもしれないが、筆者はこれらを「法外」な水準だと思っている。

 それでもお金に困っている高齢者は、自宅を売却して老後資金を手に入れられるだけでなく、そこに「住み続けられる」という殺し文句で相場を知らずに契約してしまう。

 契約者は自分名義ではなくなった家に、昨日までと同様に住み続けることができるが、その裏側では大損するリスクがある。最悪の場合はホームレスになってしまう。

 というのも、リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。

 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい。

~中略~

 最後に、あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。

 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る。

~以下、略~

ダイヤモンドオンライン

 ご承知の通り、東京およびその周辺における収益用不動産(1棟マンションなど)の利回りが著しく低迷しています。このため、収益用不動産を購入する場合、物件価格の半額までしか融資を認めないとする金融機関が増えています。収益用不動産の販売に急ブレーキがかかっています。

 不動産会社の中にも収益用不動産を購入し、運用しているところがあります。最近の利回り低下には不動産会社も困っています。

 リースバックを行えば物件を安く購入して高利回りを得ることが可能になります。このため、リースバックを手掛ける不動産会社が増えています。

 リースバックを利用する方の大半は高齢者であり、仕組みを十分に理解しないまま契約する方が多いようです。契約すると相場よりかなり安い価格で不動産が買い取られ、その後は相場を超える高額な賃料の徴収が続きます。

 リースバックを行う不動産会社は、利用した高齢者が家賃を支払えなくなった時点で容赦なく自宅を取り上げます。通常は売買契約後、約10年で家賃を支払う余裕がなくなる計算になります。不動産を取り上げられた場合、生活保護を受けられないとホームレスになる恐れがあります。

 リースバック自体は合法です。しかし、リースバックを利用する高齢者の多くは仕組みを正確に理解していません。自宅を取り上げられる場合があることを認識していない利用者が多いので問題です。

 更に問題であると思うのは、リースバックに上場大手の不動産会社が参入していることです。大手であると、何故か「安心である」と考える方がとても多いです。

 しかし、大手不動産会社の営業担当は歩合制で雇用されていることが多いです。このため、自分の成績しか考えない質の良くない者が担当者になることがあります。

 成績が欲しいためにリースバックの詳しい説明を怠り、契約に持ち込む営業担当が散見されます。

 リースバック契約はクーリングオフの適用対象外です。一旦契約すると、後から撤回することは極めて困難です。リースバックの話を持ち込んだのが大手不動産会社であっても要注意です。