建築条件付土地の特徴。解約はトラブルになる場合あり

 売地に関する情報を収集していると「建築条件付き土地」と記載された物件があります。「建築条件付き土地」とは土地の売主が建築を行う建築会社(または工務店)を指定し、土地の売買契約後一定期間(通常は3か月)内に建物の工事請負契約を締結することを販売条件とする土地のことです。

 定められた期間内に建物の工事請負契約を締結できない場合、土地の売買契約は白紙になります。この場合、原則として土地の売買代金は返還されます。後述しますが、この点についてトラブルが発生しがちなので注意が必要です。

建築条件付き土地の特徴

 売主が建設会社や工務店であることが多く、大半の物件では販売開始時に建築プランが作成されています。このため、建築される建物のイメージが湧きやすいです。

 建築する建設会社または工務店が指定されていますが、注文住宅として建てられます。間取りや内外装の細かい内容を指定することが可能です。

 通常は土地の売買契約から3か月以内に建物の細かい仕様を決定し、工事請負契約を締結しなければなりません。細かい仕様を買主が確定するには日時を要しますが、仕事などで忙しい場合はスケジュールがかなり厳しくなります。

 土地の価格は相場よりやや安く設定されていることが多く、土地の相場価格との差額を建物の建築費に充当できます。

 買主が建築条件を外したいと考えた場合、売主がこれに応じるかはケースバイケースです。売主がこの要望に応じる場合、土地代金は数%~10%程度上乗せになることが多いです。

建築条件付き土地の問題点

 まず第一に上げられるのは、複数のハウスメーカーや工務店に相見積もりを依頼することができないことです。

 また、使用する資材および設備は建設会社(または工務店)と取引関係がある部材提供会社のものに限定されます。このため、キッチンや浴室等の仕様を全て思い通りにできない場合があります。例えばヨーロッパ製の水回り設備を導入したい等の要望は叶えられないことが多いです。

 その他に、建築会社(または工務店)と買主との調整が不首尾に終わり、土地の売買契約が白紙撤回になる際の問題があります。

 前述したように、建築条件付き土地を購入する際は、土地の売買契約後3か月以内に工事請負契約を締結しなければなりません。建物の仕様を協議したものの折り合いが付かず、買主が物件の購入を断念したとします。この場合、土地の売買契約は白紙になり、既に支払われている土地代金は買主に返還されます。

 ところが、土地の売買契約が白紙撤回されても契約時に支払われた金銭は「手付金」であるとして、返還しない事案が散見されます。東京およびその近郊における手付金の金額は、土地売買代金の5~10%であり、かなり大きな金額になります。

 「契約時に受領した手付金は決済時に売買代金の一部として充当される。しかし、決済前は『手付金』であり、『売買代金』ではない。従って土地売買契約の解約に際し返還する理由はない。」と主張する売主が散見されます。

 土地の売買契約を締結する際は売買契約書を確認し、白紙撤回の際に手付金が返還されるかの確認を強くお勧めします。

 また、この建築条件付き土地を不動産仲介会社を通じて購入し、不動産仲介会社に仲介手数料を支払った場合も問題になります。土地の売買契約が撤回された場合に仲介手数料の返還を要求できるかですが、筆者は難しいと考えます。

 その理由は、不動産仲介会社は物件の紹介、契約書の作成、融資の手配等を行い、業務を完遂しているからです。土地の売買契約が撤回されても不動産会社の仲介業務は履行済なので仲介手数料の返還は請求できないと考えられます。

 住宅ローンが成立しない場合はローン特約により仲介手数料の返還を受けられます。この場合と同様ではないかと思われる方がいらっしゃいます。

 しかし、ローン特約は落ち度がない買主を保護する為の規定です。買主と建築会社(または工務店)との交渉が成立せず、土地の売買契約が撤回になったとしても不動産会社における落ち度はありません。

 土地の売買契約締結後に売買契約が解除された場合でも、土地売買契約書に特約がない限り仲介手数料の返還は受けられないとお考えください。