中古収益用不動産(賃貸マンション等、一棟)購入時の注意点(その1)

既に多くの収益物件を運用されている方も多いと思いますが、1棟ものの賃貸マンションやソシアルビルの中古物件を購入する際に、見落としがちな注意点があります。

価格、立地、賃料収入、入居者の属性、利回りを確認し、共有部および空室(ある場合)の内見を行うだけで購入の可否を判断される投資家の方がかなり多いです。しかし、設備機器の老朽化による更新が必要になったことから売却を急いでいる収益用不動産が多くあるので注意が必要です。特に注意するべき3つの設備機器について書きます。

1.エレベーター
エレベーターは建築後25~30年を迎えた時点で大規模な更新(リニューアル)工事が必要です。
老朽化していると判断される場合には更新する必要がありますが、費用はかなり多額です。

建物の階数にもよりますが、建物に固定されている部品(各階の三方枠など)の中で継続して利用できるものは引き続き使用する場合でも、モーター、制御装置、籠の更新に1,000万円以上を要することがあります。

問題なのは、工事期間はエレベーターを利用できないことです。利用できない期間は3~5週間程度になることが多いです。エレべーターを利用できない期間における賃料減額を、エレベーターを利用する上層階の賃借人から要求されるでしょうし、階段を利用できない賃借人に対する対応も検討する必要があります。

多額の費用発生、賃借人への周知・説明と個別対応、賃料の一時的な減額を行う必要があることから、エレベーターの更新時期を迎えたことから物件の売却を決断される方がいらっしゃいます。

中古で1棟もの、かつエレベーター付きの収益用物件の購入を検討する場合は、エレベーターにおける老朽化の程度、修繕および更新の履歴等について忘れずに確認する必要があります。更新費用は安全に関わることなので、先送りにしたり支出を怠ることは許されません。購入後に多額の更新費用がかかることを知っても後の祭りです。

利回りを算出する際には物件自体の価格だけではなく、更新(リニューアル)費用を勘案して再計算する必要があります。

価格交渉の際には、エレベーター更新の費用相当額の値引きを要求することも有効です。(立地が良い物件の場合には、応じてもらえない事が多いですが...)

2.各部屋のガス給湯器
これも見落としがちです。使用頻度にもよりますが、8~10年に1回程度の更新が必要です。売主に更新履歴を確認しておく必要があります。

追い炊き機能のない給湯器の更新費用は1部屋当たり20万円弱(消費税、工事費込)を要します。追い炊き機能付の場合は1部屋当たり40万円前後(消費税、工事費込)を見込んでおく必要があります。

賃貸マンションの場合、一定の時期が経過すると各部屋の機器が一斉に故障しがちです。同時に多数の機器を発注することによりコストを抑えられると考えがちですが、各部屋における故障はバラバラに発生するのが実情です。しかも更新の先送りが許されない機器です。一斉に故障した場合には多額の費用が発生します。

例えば30室のマンションにおいて給湯器を一斉に更新すると、追い炊き機能が無い場合でも約600万円、追い炊き機能付きの場合は約1,200万円の費用を要します。6年以上前に一斉に更新した履歴がある場合は近いうちに再び一斉に更新する必要があると考え、費用を予め見積もっておく必要があります。

3.オートロック関連機器
10~15年程度に1回の更新が必要です。玄関の自動ドアだけではなく、自動ドア近くにある集合玄関機(来訪者に訪問先の部屋番号を入力させ、各居室内のモニターに来訪者の顔を表示し、来訪者との通話を可能にする機器)、および各居室内機器、居室玄関インターホンの更新も必要です。

更新には1部屋あたり約10万円が必要であり、部屋数が多い場合には結構多額になるので要注意です。例えば、30室であれば消費税込で330万円になります。自動ドアを交換する場合には、その費用が加算されます。