不動産一括査定サイトには要注意
最近、不動産の売却をしたい方は「一括査定サイト」を利用するのが便利であるとする広告が、WEB上において盛んになされています。しかし、一括査定サイトを利用する際は、十分に注意しなければなりません。
利用すると、売却希望案件として情報が複数の不動産業者に流れます。多くの会社の営業担当から電話攻勢を受けるのは避けられないでしょう。突然自宅に押しかけて売却を迫る営業担当も多くいます。サイトの規約に「自宅訪問はしない」と書かれていたとしても、営業担当の多くは給与が歩合制であるため、そのような規約は無視すると考えておいた方が良いです。
さらに、内緒での売却が出来なくなります。私の会社がある東京都の目黒区は、いわゆる「山の手」といわれ、人気がある高級住宅街です。近所の方の目を気にする方が多く、いわゆる「内緒での売却」にこだわる方がとても多いです。
「売却に際してはインターネット等に広告を出さないで欲しい。貴方を信用しているので、貴方が安心して取引している不動産業者以外には情報を出さないで欲しい。」と依頼されることがよくあります。一括査定サイトを一回でも利用すると、「内緒での売却」はできなくなります。
そもそも一括査定サイトを利用される方は以下のことを期待しているのだと思います。
- 不動産価格を複数の業者が提示してくれる。
- 売却価格の目安を付けやすくなる。
- 一番高い価格を付けてくれたところに頼みたい。
- 査定を請け負う会社には大手の業者も多く含まれるので安心できる。
一番高い価格を付けてくれたところに依頼したいと思う方がとても多いので驚かされます。多くの不動産会社において、この傾向があるのは周知の事実です。このため、相場を逸脱した価格を提示することが増えています。
私の会社に土地の売却を希望されるお客様が来られました。来店前に一括査定サイトで査定されたとのことでした。市場価格は5,000万円ですが、一番高い査定価格は大手の○○不動産が提示した6,500万円。何と相場の3割増。しかし、このお客様は「もっと高い価格で売りたい。どうしたらよいか。」と言われました。期待していた価格よりも高い査定が提示されたので舞い上がってしまい、さらに高額で売りたくなったというのが真相でしょう。
市場価格との乖離がとても大きく、この価格で売れないことは明らかです。市場価格の決まり方や近隣の相場をお話ししても「大手が査定した結果だから間違いない。」と言って聞く耳を持ちません。あまりにも高すぎるので、私が懇意にしている他の業者に物件情報を流しても私の信用が失墜することが明らかです。
結局、この方は「一番高い査定をした大手の○○不動産に頼むからいい。貴方には頼まない。」と言ってお帰りになりました。その後、1年近く経った後、この土地は大手の建売住宅販売会社に売却されました。推定される売却価格は市場価格の約7～8割である3,500～4,000万円と思われます。一番高い価格を提示した大手の不動産会社による査定結果6,500万円の6割程度の価格で売却することになったわけです。
大手○○不動産の営業担当は「一括査定サイトで提示した価格で売り出しましょう。」と言い、長期間放置した後に値引きを迫ったのでしょう。「売却に向けて努力したのですが、買い手が現れません。価格を下げましょう。」と言って下げさせたわけです。売主は「大手が言うのだから間違いない。」と信じ切っているため、ガッカリして弱気になったのでしょう。弱気になったところを見計らい、建売住宅の販売会社に紹介したのだと思われます。
一括査定サイトを利用せず、最初から私に依頼していれば市場価格である5,000万円で売却できたと思います。最終的には3,500～4,000万円程度で手放したのであり、1,000～1,500万円程度を損したことになります。
そもそも不動産の査定は短時間で出来るものではありません。正確な査定をするためには現地調査が不可欠です。内緒での売却が不可能になる等のデメリットがあり、査定価格はいい加減。それなのに一括査定サイトを利用する方が多く、しかも査定サイトの査定結果を信じ切っている方が多いのは不思議です。
大手であっても、この記事に記載したような悪質な営業担当は散見されます。悪質な営業担当については後日に改めて書きます。原因は、行き過ぎた成績至上主義と歩合制給与にあると言えます。