不動産の売物件が激減しています

新型コロナウイルス禍であることから、不動産を安値で手放す方が増えるのではないかという「期待?」があるためか、「とにかく安く買える不動産が欲しい」、とか「コロナ禍になる前の価格よりも2割くらい安い不動産を探している」等の問い合わせがあります。

1.住宅ローンの返済困難を理由として売却される不動産が、一般の方に安く売られることはない
確かに住宅ローンが払えなくなった、または資金繰りに窮している方は増えており、折角手に入れたマイホームを手放さなければならない方が増えています。

最近、このような方が手放した物件を安く手に入れたいという問合せが頻繁にあります。確かに住宅ローンの支払い遅延による任意売却が行われる案件はそれなりにあるのでしょうが、決して多くはないというのが実感ですし、不動産業者ではない一般の方がそのような不動産を手に入れることは至難の業です。

何とか手放さなくて済ませる方法がないかと言うことで、滞納に陥る前に金融機関に相談し、返済期間を長く設定することにより毎月の返済額を少なくする事に成功したという話を聞きます。任意売却や競売による売却を行うと金融機関もそれなりの持ち出しを強いられることが多いので、今回のコロナ禍ではできる限り金融機関も返済に協力しようとしているようです。

金融機関が融資条件を改定する余地がなく、住宅ローンが返済される可能性がない場合には任意売却や競売になります。しかし、競売になるのはほんの一部であり、大半は任意売却により不動産買い取り業者が購入します。

一般の方が買えることはほとんどありません。何故かというと、任意売却の情報は不動産会社限りとされることが多いからです。それに、一般の方のほとんどはローンの利用を希望されます。ローン審査には3~4週間を要することが多く、任意売却物件はこの審査期間を待つことが出来ません。

買い取れるのは不動産販売代金の全額を現金一括で決済できる不動産会社、または任意売却物件の購入にも利用できる融資枠を受けている一部の大手不動産会社のみです。住宅ローンの返済が困難になったことを理由として売却される不動産を一般の方が安く購入できることは極めて稀です。

2.一般の方が不動産を安く買える可能性があるのは、不動産の買い替えにより売却される物件
現在居住している不動産が手狭になったので広いところに買い替えたい、戸建住宅が老朽化したことをきっかけとして交通の便が良いところに移転したい等の相談を受けます。

不動産の買い替えを行う際にはそれまでに居住していた住宅を売却し、その代金を新たな不動産の購入費用に充当するのが一般的です。このため、気に入った物件が見つかった際には可及的速やかに売却したいという話になります。

取り急ぎ物件を売却し、賃貸物件に引越してから新しい物件を探されることを選択されるお客様もいらっしゃいます。しかし、都心の場合は賃貸物件の家賃が高額なところが多く、仲介手数料及び引越代が必要になることから、引越をしなくて済むなら多少安くなってもすぐに購入してくれる方に売却したいと考える売主様が多くいます。

タイミングの問題になりますが、買い替えの際に売り出される中古物件とほぼ同じ内容の不動産を探している方がいらっしゃった場合は、その方は相場より安く不動産を購入できます。

ちなみに相続があった際に不動産が安く売り出されると思われている方が多いのですが、最近では状況が異なります。東京の都区内では相続税対策として収益用不動産を購入し、建物の建設費は二世代でローンを返済する等の方法による相続税対策をされる方が増えています。

また、御子息がいらっしゃる場合はその誰かが不動産を承継することが多いです。このため、相続をきっかけとして不動産が安値で売り出されることは、数年前と比較するとかなり少ないと思います。

3.コロナ禍のため、買い替えを検討されるお客様が激減
お客様を不動産の内見にお誘いしても「コロナが怖いから、今は内見しない。」と言われることが増えています。また、それなりの収入がある方でも今後は収入が減ることを予想し、「不動産購入をペンディング(先送り)させて欲しい。」と言われることが増えています。

特に飲食に関連する会社の経営者、従業員から「物件をいくつか紹介してもらいましたが、コロナのため購入を断念しました。お世話になりました。」等の連絡が増えています。

また、コロナ禍の最中に不動産を売却した場合、安く買いたたかれるとお考えの方が多いようです。確かに購入を希望されるお客様が減っていることから、購入希望者からの値引き要求が生じやすいかもしれません。「今は、買い替えると大損をするかもしれない。」という心理が働いているのは言うまでもありません。

以上の理由により買い替えを検討されるお客様が激減しており、買い替えをきっかけとした売物件はかなり少ない状況です。

4.今後の見通し
任意売却物件については不動産買い取り業者が買い取り、リフォーム後に再販される状況です。その数は、まだそれ程多くありません。前述したとおり、金融機関が住宅ローンの返済プラン変更に前向きに対応しているからです。

しかし、コロナ禍の収束が長引いた場合にはこのような物件が増えます。これに伴い、不動産業者が売主である中古物件が増えると思います。しかし、価格は市場流通価格に近く設定されるため、安値での販売は期待できません。

現在、コロナ禍が深刻になりつつあるため、買い替えを断念される方が増えています。この傾向はコロナ禍が完全に収束し、経済面が好転するまで続くと思います。

売物件、特に安値での売物件はとても少なくなっています。