複数の賃貸物件に対し、同時に入居申込をされると大迷惑

2020年12月28日

新年になると、賃貸物件の募集シーズンが到来します。入学や新入社員の入社は4月に行われますし、会社の人事異動や転勤の発令は3月から4月に行われます。

賃貸住宅の解約は退去日の1~2か月前迄に行うことが賃貸借契約において定められています。このため、1月下旬から3月上旬にかけて解約の申し入れが多く発生します。退去後にリフォーム及びハウスクリーニングを行い、入居者募集を行うのが一般的です。

賃貸物件を探しているお客様に、絶対に止めていただきたいことがあります。それは入居申込を複数の物件に対し、同時に行うことです。

私の会社に来られたお客様の中に、以下の行動をされた方がいらっしゃいます。

①ある物件を内見し、気に入ったことから入居申込書を不動産会社Aに提出。
②その1週間後に別の物件を内見し、これも気に入ったということで、入居申込書を不動産会社Bに提出。
③さらに1週間経った後に私が紹介した別の物件を内見し、入居申込書を私の会社に提出。
④その後、また別の物件を内見し、入居申込書を不動産会社Cに提出。

私の会社に入居申込書が提出された日はオーナー様が不在であったため、オーナー様による入居審査を直ちに行うことが出来ませんでした。翌日にオーナー様と相談したところ、入居が許可されたので本人に回答しました。その際に、賃貸借契約を1週間後に締結することで合意しました。

契約の前日に、入居申し込みをした本人から契約を延期して欲しいとの電話がありました。都合の良い日を尋ねましたが、「少し先にして欲しい。」と言うばかりで要領を得ません。

契約日を決めないと契約が出来ない旨を伝えたところ、「他に良い物件があるかもしれないから待って欲しい。」と言います。

唖然としながら「ひょっとしたら、他の物件にも入居申込書を提出しているようなことはありませんか。」とお尋ねしたところ、上記の①~④の状況であることを伝えられました。

「入居申込書をあちこちの不動産会社に提出しても、契約していなければ不動産屋さんは費用を請求できないから、良さそうな物件であると思ったら入居申込書をどんどん出すのが良い。良いと思う物件は他の人も良いと思っているから、他の人に取られないようにしないといけない。」と友達にアドバイスされたとのことです。

ワガママの極致であり、開いた口が塞がりません。不動産会社およびオーナーにとって、これほど迷惑な行為はありません。

これでは入居申込書を提出していただく意味がありません。

入居申込書が提出された時点で、不動産会社は当該物件に対する賃借人の募集を停止し、レインズ、アットホーム、スーモなどのサイトに掲載している物件情報を掲載から取り下げます。また、他の不動産業者からこの物件が賃借人募集中であるか否かの問合せがあった際に、入居者が決まった旨を知らせることになります。

このようなワガママな理由で入居申込書が撤回されると、多くの方が大迷惑を被ります。最終的に入居してもらえなかった賃貸物件のオーナー、および紹介した不動産会社における営業上の損失になります。

物件を探している他の方にも迷惑です。内見を済ませ、気に入ったので不動産会社に入居申込書を提出した際に「入居者が既に決まったので御理解ください。」と言われたらどのような気分になるでしょうか。「入居者が決まった」といっても、それが入居する意思がない方による、虚偽の入居申込によるものだと知った場合、この方は不愉快になるのではないでしょうか。

賃貸物件の募集時期は2~3月であり、この期間を過ぎると物件探しをされる方は激減します。入居申込書が提出されたために他の方からの申し込みをお断りし、物件が空室のまま4月迄放置されたらオーナーは大損害を被ります。場合により翌年の春まで空室になり、賃料収入を得られない状況に陥ることがあり得ます。

このようなことが起きると、入居申込書を受け取った不動産会社がオーナー様から出入り禁止を申し渡されることがあります。具体的にはこのオーナー様の物件に関する管理委託契約を解約される、あるいは更新を拒否される事態が想定されます。

入居申込書を提出した以上、オーナーから入居を承諾された際には賃貸借契約を締結するのが最低限のエチケットであると思います。他の物件を内見したいのであれば、入居申込書の提出は控えるべきです。

入居申込書とは、オーナーが入居を承諾した際には賃貸借契約を締結することを約した書類であると考えるべきです。

※12月28日追記
オーナー様が入居を承諾された後、契約の前に重要事項説明があります。重要事項説明書の内容に違法な文言がある等などの場合に、それを指摘して契約の締結を拒むことは正当な行為です。念のために申し添えます。