不動産売買契約書に貼付する印紙について
不動産売買契約を締結する際には、契約書に収入印紙を貼付し、消印をする必要があります。なお、建物の賃貸借契約書における印紙税は不課税なので、印紙を貼付する必要はありません。
税額は、契約書記載の金額で決まる
例えば、土地の権利が借地権で、借地上にある建物と共に購入する際は、借地権設定に要する費用と建物代金の合計額を基準として税額が決まります。
借地権の設定を内容とする賃貸借契約書には、収入印紙の貼付が必要
建物のみを対象とする賃貸借契約書の印紙税は非課税なので、収入印紙を貼付する必要はありません。しかし、借地権の設定を受ける際に締結する土地の賃貸借契約書には印紙税が課税されます。
賃貸借契約の場合、建物は非課税、土地は課税です。
印紙税の税額
貼付する収入印紙の金額は、契約書記載の金額により異なります。令和4年3月31日迄は、金額が10万円を超える場合に軽減税率が適用されます。
この軽減措置はこのところ毎年延長されていますが、軽減措置がなくなった際には契約書記載の金額が10万円を超える場合の税額が2倍になります。軽減措置の実施により、税額は下表の通りです。
不動産売買契約書記載の金額 | 印紙税額 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
通常、契約書は売主および買主が各々一通づつ作成します。売主および買主はそれぞれ上の表に記載した金額の印紙を契約書に貼付し、消印をする必要があります。
なお、建物を新たに建築する場合は請負に関する契約書を締結することになりまが、この場合の印紙税額は上表と異なります。
不動産の譲渡や建設工事の請負に関する契約書に貼付する印紙の税額は、以下のURLを参照願います。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
契約書を1通だけ作成する場合
2通作成すると印紙代がかかるという理由で契約書を1通のみ作成することを提案されることがあります。この場合、契約書を金融機関に提出する側(通常は住宅ローンや事業用ローンを利用するということで買主側)の契約書を正本とし、こちらのみに印紙を貼付します。相手側はコピーを受け取ります。
しかし、コピーを受け取った側には不動産売買契約を締結したという直接的な証拠が残らないことになります。そこで証拠としての機能を持たせるべく、コピーした契約書に署名や捺印をしてもらうことを考えますが、これを行うと、税務署による調査や指導があった際に「これはコピーではなく契約書である」と判断されます。この場合は(印紙)懈怠税が課されます。
この懈怠税は本来貼付するべき印紙税額の2倍であり、本来納付するべき税額と合計すると3倍になります。なお、印紙を貼ることを忘れたとして調査前に自己申告した場合の懈怠税は1.1倍であり、本来納付するべきである税額の2.2倍を徴収されます。
不動産売買を行った証拠を残すためには、売買契約書を二通用意し、売主および買主の双方が各々印紙を貼付し、消印することをお勧めします。
私の会社でも、税務署から予告なく不動産売買契約書の提示を求められたことがあります。印紙を貼付し、消印をしてありましたので事なきを得ました。
印紙を単に貼付しただけでは印紙税を納税したことになりません
消印をすることにより納税したと認められます。署名するか印鑑の押印が必要です。消印をしていない場合、懈怠税徴収の対象になります。
不動産売買契約が成立しなかった場合における印紙税
住宅ローンを利用して住宅を購入することを予定していたものの、金融機関が住宅ローンの引き受けを拒否したことからローン特約が適用され、不動産売買契約が成立しないことがあります。この場合、手付金は買主に返金され、仲介手数料を不動産会社に支払わなくて済みます。
この場合、契約書に貼付した収入印紙の印紙代を返金してもらえるかが問題になりますが、結論としては返金を受けられません。住宅ローンの審査を通過出来なかった場合でも、売買契約は一旦成立していることから契約書に貼付された印紙の税額は返還できないとの見解に立っているようです。
正直申し上げると、私はこの考えに不満があります。住宅ローンが成立しない場合、売主は買主から受領した手付金を返金し、仲介した不動産会社は仲介手数料を貰えないことになります。ローン特約は落ち度のない買主を守るための制度ですから、印紙税も契約当事者に返金する対応をするべきであると思います。
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