家賃保証会社の利用が必須となる賃貸物件が激増し、大混乱
今年の繁忙期は、賃貸借契約締結の際に大混乱
2020年4月1日に施行された改正民法により、賃貸借契約を締結する際に連帯保証人の引き受けをお願いする方に対し、連帯保証債務の極度額(連帯保証を履行してもらう際に請求される金額の最高額)を告知し、承諾を得た上で賃貸借契約書または連帯保証人引き受け承諾書に記載しなければならなくなりました。
昨年の繁忙期(1~3月)は、改正民法はまだ施行されていませんでしたので、大きな混乱はありませんでした。しかし、今年の繁忙期は、様相が大きく異なります。
改正民法および関連法の説明をするのは一苦労であり、来店されたお客様の中には「この法改正は全く納得できない。従来通りの方法で手続きしてくれる店があると思う。他の店に行く。」と告げてお帰りになる方が多くいます。しかし、どこの不動産会社に行っても同じ対応をされます。まさに大混乱です。
連帯保証契約を締結する際における、連帯保証債務の極度額告知義務
連帯保証人を引き受ける方に対し、極度額を告知することは改正民法が定める「義務」であり、賃貸借契約書または連帯保証人引受承諾書に極度額を記載しない場合、連帯保証契約は無効になります。つまり、家賃の滞納などが発生しても、オーナーは未納家賃を連帯保証人に請求することはできなくなります。
連帯保証人の引受けをお願いする際に告知しなければならない連帯保証債務の極度額は、実務では二年分の家賃(共益費を含む)相当額とされています。家賃と共益費の合計が8万円の物件では192万円になりますし、12万円の物件では288万円になります。
さらに、事業用物件の場合は極度額を告知して連帯保証契約を締結したことを記載した公正証書を作成する必要があります(法人が契約する場合、事業主本人またはその配偶者が連帯保証人を引き受ける場合を除く)。
連帯保証人の引き受けをお願いする方に極度額を告知すると、金額がかなり巨額であることから多くの方が連帯保証人の引き受けを尻込みされます。賃貸借契約を締結する直前で、連帯保証人の引き受けを断られることがよくあります。
連帯保証人を引き受ける方がいない場合は、家賃保証会社を利用するしかない
連帯保証人を引き受ける方が誰もいない場合は、必然的に家賃保証会社を利用するしかありません。家賃保証会社と借主との間で家賃保証契約を締結してもらいますが、その際には家賃保証会社には保証料を支払う必要があります。通常、保証料は家賃の0.5~1か月分の金額になります。割と高額なので、これも賃貸物件を探している方の怒りを買う原因です。
「保証料は不動産会社や大家が支払えば良い。私は保証料を払うつもりはない。」と言って怒り出す方が多くいらっしゃいます。しかし、連帯保証人を誰も引き受けず、家賃保証会社との保証契約締結を拒む入居希望者は、どこの賃貸物件にも入居できません。理解してもらうための説明には多くの時間を要し、骨が折れる作業になります。
民法における、連帯保証に関する条文が改正された理由
民法が改正された理由は、連帯保証人が連帯保証債務の履行を迫られたために悲劇を被る事案が増えていることによります。連帯保証人を引き受けたために自宅や財産を失った、または連帯保証人が自殺した事案が数多くあります。このため、国は連帯保証制度を見直し、安易に引き受けられないようにしたわけです。
私の会社が過去に扱った自宅売却事例の中にも、連帯保証人を引き受けたことによる売却案件があります。
連帯保証人を立てることを可能にすると極度額を告知しなければならず、賃貸借契約の直前に連帯保証人の引き受けを断られることが容易に想定されます。このため、不動産会社の実務として、「家賃保証会社の利用必須」の賃貸物件が激増しています。
家賃保証会社の利用が前提になることによるデメリット
家賃の滞納が発生すると、大半の家賃保証会社はマニュアル通りに厳しい督促を行います。家賃を滞納する借主に対する温情はありません。滞納が続いた場合は、オーナーまたは管理会社と連携して退去の手続きを開始します。
併せて、家賃保証会社は未払い賃料をオーナーに代位弁済します。すると、代位弁済が行われた事実が指定信用情報機関に登録されます。登録されると新しいクレジットカードを作成する、自動車ローンを借りる等の際に支障をきたします。さらに、何らかの理由で転居した際に、代位弁済の履歴があることから新たな物件の入居を断られることがあります。
先日の投稿に書きましたが、未払い賃料の支払をめぐる裁判が提起されると、状況により逮捕され、懲役刑や罰金刑に処せられる場合があります。家賃を滞納すると、とてつもないペナルティーを負います。何とも世知辛い世の中です。
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