アパートの階段が崩れ、居住者が死亡する事故が発生(東京都内)

2021年4月24日

報道によると、4月17日に東京都八王子市にあるアパートの外階段が崩落し、住人が頭を強く打ち、死亡する事故が発生しました。

東京では新型コロナウイルス感染症および緊急事態宣言発令に関するニュースばかりで、この事故のニュースを取り上げている報道は少ないです。

詳細な内容を記載していると思われるのは、秋田放送のWEBサイトです。

※リンクは掲載社の都合により、予告なく削除されることがあります。予め御了承願います。
※4月24日追記:リンク先の元記事が削除されましたのでリンクを外しました。

以下、引用です。

現場となったのは東京・八王子市にある3階建てのアパートです。ブルーシートで覆われていた部分に外階段があり、そこで事故は起きました。

警視庁によりますと、17日、住人の50代女性が1階から階段をのぼっていたところ、途中の踊り場から2階まで3段ある階段がすべて崩れ落ち、およそ2メートル下に落下したということです。女性は頭を強く打ち病院に搬送されましたが、いまも意識不明の重体です。

~中略~

アパートが建てられたのは、いまから8年前の2013年です。崩れ落ちた部分よりも上にある階段は、少しさび付いているようにも見えます。警視庁によりますと、階段の踏み板は金属が使われていましたが、側面が木でできていて、その部分が腐食していたということです。

秋田放送

元記事が書かれた時点では「重体」でしたが、22日にお亡くなりになられたとのことです。謹んで、御冥福をお祈りします。

事故が起きたアパートは築8年であり、築浅ではありません。しかし、階段の崩落が起きるにしては早すぎると言えます。

第一報を知った際には階段の側面を構成する鉄骨、および鉄板で構成される踏み板との溶接不良が原因かと思いましたが、そうではないようです。

報道によると側面は木製であり、腐食していたとのことです。また、WEBサイト上の動画によると踏み板が錆びていることが確認できます。以下の二点が問題であると思います。

・外階段であるにもかかわらず、階段の側面が木材で構成される木製階段であった。
・踏み板が錆びていることから雨水が激しくあたる場所であったと推察される。

木造住宅の場合は屋根およびモルタル等の外壁で護られていることから、建物の寿命は20~30年程度(十分なメンテナンスを行い、さらに寿命が長い材料を選択すれば更に長く利用可能)です。しかし、屋外の雨で濡れる場所に設置した、屋根および外壁がない木製の構築物を安全に利用できるのは数年~10年未満と思われます。それもペンキ塗り等の防腐措置を頻繁に行なうことを前提とした場合です。

設備の寿命を過ぎているのに使い続けたことが原因かもしれません。詳細は捜査や裁判の過程で明らかになると思います。

責任を負うのはオーナー、施工業者、それとも管理会社?
建物内で発生した事故により住人が死亡したことから、遺族に対する損害賠償および慰謝料の問題が生じます。死亡事故であることから損害賠償の金額は莫大になると思われます。

共用部の事故であることから他室の住人に対するホテル代や住宅を利用できないことに対する補償の問題、転居をしてもらう必要がある場合には転居先を探して引っ越してもらう費用の問題が生じます。

警察による捜査後に立件され、刑事責任(業務上過失致死罪等)を問われることが容易に想定できます。最終的な責任の所在が誰になるのかは、まだわかりません。

このアパートを建築する際に階段の仕様を決めたのは誰か、管理会社はこの外階段が危険であると認識していたか、認識していた場合にそれをオーナーに伝えていたか、オーナーは危険を認識していながら放置したか、等が問題になります。民事および刑事の両面において、責任の所在は裁判所が判断することになります。

この事故は、賃貸住宅のオーナーは施設賠償責任保険(施設所有者賠償責任保険、施設管理者賠償責任保険ともいう)への加入が必須であることを改めて認識させたと言えます。

この保険だけでは全ての損失をカバーできない場合がありますが、それでもこの保険に加入しておく意義は十分にあります。