空家の中古戸建住宅がある場合、売るべきか貸すべきか

・実家の戸建住宅を相続でもらい受けた。
・戸建住宅に住んでいる親が高齢者施設に入居したので空家になった。
・自身で購入した戸建住宅で暮らしているが、勤務先から転勤を命じられた。数年以上戻れない。

等の方から、空家の戸建住宅をどのように活用すれば良いかという相談を受けます。
ほとんどの方は売却、または第三者への貸し出しを検討されています。

多くの方が、「今すぐに売りたい」とか「今すぐに貸して収入を得たい」と言われるのですが、一筋縄ではいかない場合がよくあります。

1.売却の際における問題点
所有権が他人に移転すると、後で取り戻すことはできません。

高齢者住宅に移り住んだ場合は、入居先で不都合が生じた際に戻れる住宅を用意しておくことが必要になります。このため、高齢者住宅への入居することにより空家となる物件の売却はお勧めしません。

古い戸建住宅の場合、特に築25年以上を経過した木造住宅では、建物に対する査定がゼロであることがよくあります。高額な材料を使用し、設備を充実させていても、査定はゼロもしくはそれに近くなります。

この場合、購入希望者より「所有者の費用負担で建物を取り壊して欲しい」と言われることがあります。建物に対する愛着が強い場合、自らの手で更地にすることに心理的な負担を感じる方は少なくありません。

2.第三者に賃貸住宅として貸し出す際の問題点
内部の設備の全てが問題なく稼働することを確認する必要があります。

特に古い戸建住宅の場合にはエアコンや給湯器が故障している、一部の部屋で雨漏りがする、一部の窓ガラスや扉が開閉しにくい、内鍵がかからない窓がある、下水が詰まりやすい、便器のひびから水が漏れる、クロスが激しく汚損している等の不具合がある物件があります。設備に不具合がある状態で第三者に貸し出すことは認められません。

「現状のままで借りてくれる方を探して欲しい」と依頼されることがあります。しかし、設備に不具合がある物件を貸しても賃貸借契約を履行したことになりません。

不具合をなくし、賃貸住宅として貸し出すためにはリフォームや修繕が必要です。しかし、その費用が高額すぎて支払えないと言われたことがあります。

以前に私が関わった案件ですが、7LDKの2階建木造住宅で、賃貸住宅として転用するのに必要な修繕費が1,300万円以上に達する物件がありました。修繕費がここまで多くかかる物件はそれ程多くないのですが、300万円~500万円を要することはよくあります。

リフォーム費用を捻出し、賃貸住宅に転用することを検討する際には、採算性を考える必要があります。採算が合わない場合は売却を検討するか、空家のまま保有し続けるかの二択になると考えられます。

住宅ローンを利用して購入した住宅を第三者に貸し出す場合は、原則として事業用ローンへの切り替えが必要です。この場合は、貸し出す前に融資を受けた金融機関に相談することをお勧めします。事業用ローンに変更すると、支払わなければならない利息が高くなりますが仕方ありません。

金融機関に相談することなく第三者への貸し出しを行うと、金融機関に発覚した際に「期限の利益を喪失した」として一括返済を求められることがあります。

賃貸住宅として貸し出す場合
普通賃貸借契約では無く、定期賃貸借契約(定期借家契約)を締結することをお勧めします。普通賃貸借契約を締結すると、借地借家法により賃借人を容易に退去させることが認められません。契約更新時期が到来した場合でも、退去させることは許されていません。

定期賃貸借契約では、契約期間が終了することにより、退去を求めることが可能です。なお、契約終了の半年前に契約終了の予告を賃借人に送付する必要があります。