収益用不動産を不動産会社の仕入れ価格で購入できるか

投資家の方から、「不動産売買を生業とする不動産会社の仕入れ価格で収益用不動産を購入できないか。」という相談が時々あります。

相談者は「購入後はリフォームしてから賃貸住宅として貸し出し、一定期間保有した後に市場流通価格で売却したい。そのためには不動産業者が購入する仕入れ価格の物件を自分に仲介してもらいたい。」と言います。

多くは売り急ぐ理由があるために安い
安値で販売されている物件、特に市場流通価格よりも安値で売られている不動産の大半は、売り急ぐ事情があることから安値で売られています。売主の多くは自らの破産や経営する企業の倒産を避ける、または相続税を支払うために、早急に売却することを希望しています。

中には1~2週間以内に換価しなければならない等、緊急性を要する物件があります。このような物件は、その場で現金一括で購入していただくしかありません。

残念ながら、金融機関から融資を受けて購入することを希望する投資家様(買主様)は「門前払い」です。金融機関による事業用ローンの審査は半月以上、場合により1か月を要するのが通常であり、ほとんどの売主はこの審査期間を待てないからです。

収益用不動産の売買を繰り返す不動産会社の中には、金融機関による融資により不動産を安く仕入れる会社があります。しかし、この会社は長年の実績があることから自由に利用できる融資枠を特別に設定されているのであり、例外です。

収益用不動産を不動産会社の仕入れ価格で購入できるのは、物件を現金一括で購入できるだけの資力を持ち合わせている不動産会社、または投資家様になります。

収益用不動産を現金一括で購入できる場合でも...
さらに、不動産会社が不動産を安値で仕入れる際に、ほとんどの売主が提示する条件は「契約不適合責任の免責」および「現況有姿による引渡し」です。

「この不動産を仕入れたら身の破滅を招くことが必至」と判断できる物件が数多くあります。例えば「所有権移転仮登記」のような危険な登記がある不動産、建築不可の土地に立地する無届建築物、土砂災害が頻発し続ける土地上の物件、反社会的勢力に属する複数人の構成員が不法占有している物件等です。

このような不動産は、不動産の転売を繰り返すことを生業とする不動産会社でも、仕入れの対象にすることはほとんどありません。

また、雨漏りがする、シロアリが出る、賃借人の半数近くが家賃を滞納し続けている、迷惑行為を繰り返す賃借人がいる等の物件があります。これらの物件では、問題の解決に多額の費用を要することがよくあります。

売買契約書の特約に「契約不適合責任の免責」および「現況有姿による引渡し」が明記されている場合、解決のための費用は買主の負担になります。結果として、総費用は不動産会社などが仕入れてリフォーム後に転売する物件の購入費用とあまり変わらないことがよくあります。

不動産売買を生業とする不動産会社に勤めた経験がない方が、満足できる品質を備えた収益用不動産を、不動産売買を生業とする不動産会社の仕入れ価格で購入することは、かなり困難です。