賃貸住宅に、高齢の単身者を入居させやすくする施策が進行中

かなり以前から問題になっているのが、賃貸住宅に高齢者、特に単身者が入居することについて許可してくれるオーナーがとても少ないことです。

入居先を探して欲しいと言われても、入居を許可してくれるオーナー様がほとんどいないのが実情です。以前に300箇所以上に電話して確認したことがありますが、入居を許可してくれた物件は1件だけでした。ただし、そこは家賃が相場の2割増しであり、敷金を賃料1か月分だけ増額することを求められました。

東京都は不動産会社に対し「高齢者の入居に同意してくれるように、オーナーを啓蒙して欲しい」と依頼しています。しかし、納得できないとして「高齢者の入居は一律NG」とするオーナーが圧倒的に多数です。

今後は少子化が進行し、高齢者が増大することが明らかであることから、緊急に対応することが求められます。国土交通省は、このような状況を是正するべく既に動いています。

賃貸物件のオーナーが高齢者の入居を認めたがらない主な理由

高齢者、特に単身者の入居を拒む理由は、概ね以下の通りです。

1.お亡くなりになると「事故物件」と扱われる。
 室内でお亡くなりになり「事故物件」とされると、告知義務が生じる。
 すると、次の入居者がなかなか決まらない。
 「事故物件」になると、次の入居者を募るためには家賃を大幅に値下げしなければならない。

2.お亡くなりになった後に残置された家財道具の取り扱いが面倒
 相続人を探し出し、残置物を引き取るように要請しても、相続人が相続を放棄することがある。
 この場合は残置物の撤去及び廃棄をオーナーが行わなければならない。

3.病気になった場合に、介助する方がいない
 急病などの緊急時に対応出来る方がいないと、そのまま室内で死亡することがある。
 このために「事故物件」とされるのではたまらまい。 

1および3について
このブログにおいて先日紹介した「事故物件の取り扱いに関する指針案が公表されました」のところで書いた通り、いわゆる病死や自然死で室内が汚れなかった場合、および日常生活中の事故における死亡(階段からの転落など)については事故物件とは扱わないとする指針案が国土交通省より提示されています。

また、この指針案では賃貸物件が事故物件になった場合でも、告知義務が生じるのは3年間に限るとしています。賃借人が室内で亡くなった場合はその理由によらず全て事故物件と見做すべきとする見解がありますが、指針案通りに法律が作成された場合には事故物件ではなくなります。

このため、高齢の単身者に入居していただき、老衰や不慮の転倒事故などによりお亡くなりになった事案で、室内が汚れなかった場合は事故物件に該当しないことになります。

高齢の単身者には見守りおよび介助する人が必要です。このため、大半の自治体において見守りや安否確認を行う制度を条例として制定しています。さらに、民間においてもこれらのサービスを提供する会社が増えています。

2について
今般、法務省及び国土交通省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。

概要は、賃借人は自分が亡くなった後の残置物の処理、および賃貸借契約の解除に関する事務を受任する者を定め、受任契約を締結した上で賃貸借契約を締結することになります。対象となる高齢の単身者は60歳以上を予定しています。

受任者は原則として賃貸人の推定相続人のいずれかとしますが、推定相続人が誰もいない場合は居住支援法人、または管理業者を受任者とすることができます。ただし、オーナーは賃借人(および推定相続人)と利益相反の関係にあることから受任者としては不適格であるとされています。

残置物の処理ですが、受任者は残置物の廃棄、および指定先(相続人など)への送付を依頼されたものについては指定先に送付する事務を行います。詳細は、国土交通省のWEBサイトを参照願います。