賃借人の連帯保証人が架空の人物であった場合、オーナー様はどうするか
※一昨日に投稿した内容の続きです。
令和2年4月に施行された改正民法により、連帯保証人になる方には連帯保証債務を実行しなければならなくなった場合における極度額(いわゆる最大の保証金額)を告知し、契約書および連帯保証人引き受け承諾書にこの極度額を記載しなければならなくなりました。
実務の上では、賃貸借契約における極度額は2年分の家賃相当額(家賃および共益費の合計額)とされています。例えば月家賃6万円、共益費5千円の物件の場合では65,000円の24倍である156万円になります。月家賃20万円の物件では480万円になります。
連帯保証人になろうとする方に対し、最大でこの金額の支払いを求められる可能性がある旨を告知すると、連帯保証人の引き受けを辞退されることがあります。連帯保証人になろうとする方から「高額すぎて納得できない」と言われます。このため、東京都区内ではほとんどの賃貸物件において賃貸保証会社の利用が必須になりました。
賃貸保証会社を利用することにより、架空の連帯保証人を立てられる恐れはなくなります。しかし、何らかの理由により、賃貸保証会社が(家賃)保証契約の引き受けを拒否することがあります。
無職かつ無収入の方、過去に家賃を滞納した際に賃貸保証会社がオーナーに代位弁済をした履歴がある方等は引き受けを拒否されます。さらに、非正規雇用の方、持病がある高齢者、いわゆる水商売の仕事に就いている方についても拒否されることがあります。
このような場合は、連帯保証人を立てることを条件として、不動産会社からオーナーに入居をお願いすることになります。
しかし、身寄りが誰もいない等の理由により連帯保証人を立てられないことがよくあります。賃貸保証会社が(家賃)保証契約の引き受けを拒否しており、連帯保証人になる方が誰もいない場合にどのように対応するかは、主に不動産会社の判断になります。
健康状態が良好である場合は、最終的には行政やNPO法人などの協力により、いわゆる「住み込み」で働ける場所を斡旋し、同時に入居先を決めることがあります。また、「他の不動産会社に行く」と言ってお帰りになる方がいらっしゃいます。
ところが、住み込みで働ける場所を斡旋しても、不動産会社は仲介手数料を貰えません。このため、仲介手数料欲しさにアリバイ会社(在籍会社)を利用する不動産会社が未だに多いのが実情です。
アリバイ会社は源泉徴収票等の収入証明書、勤め先の従業員証、連帯保証人の印鑑証明、その他の書類を捏造し、オーナーおよびオーナー側の不動産会社を騙します。
アリバイ会社の利用が発覚する場合
家賃の滞納が続いた場合に発覚することが多いです。
本人の勤め先に電話をしても在籍を確認できず、連帯保証人に連絡を試みても電話が繋がらず、連帯保証人に書類を郵送しても「宛所がない」として返送されることにより発覚します。
架空の連帯保証人を仕立てて賃貸物件に入居すると詐欺罪が成立する
アリバイ会社を利用して架空の連帯保証人を仕立てることにより賃貸借契約を締結し、入居した場合には詐欺罪が成立します。
オーナーを欺罔し、「連帯保証人が存在する」との錯誤に陥らせ、賃貸借契約の締結という処分行為を行い、部屋のカギを交付させる(賃借権を提供させる)という一連の行為は、詐欺罪(刑法第246条第1項)の構成要件を満たします。
連帯保証人が架空の人物であることが判明した場合は、賃貸借契約の即時解約が可能
借主が架空の連帯保証人を立てる行為は、借地借家法が定める「賃貸人および賃借人における相互の信頼関係を破壊する行為」に該当しますので、賃貸借契約の即時解約が可能です。
家賃の滞納が継続していることを理由とした賃貸借契約の解約には最低でも3か月が必要です。この期間を経過しないと裁判所は明け渡し請求の訴状を受理しません。しかし、連帯保証人が架空の人物である場合は賃貸借契約の即時解約が可能であり、裁判所は明け渡し請求の訴状を速やかに受理してくれます。
連帯保証人が架空の人物であることが判明した場合、賃借人に対し、直ちに退去して欲しい旨を伝えて構いません。明け渡しに応じない場合は、明け渡し請求の裁判を提起し、必要に応じ裁判所による強制執行により退去させることになります。
警察に被害届を提出するか否かはオーナー様の判断になります。退去に関する交渉の際に、被害届の提出を猶予することを条件として早めの退去を要求する交渉方法がありますが、このような借主の移転先を見つけることは極めて困難です。
オーナー様が借主に賃貸借契約の解約を伝えた際に、借主がオーナー様を恫喝する、または暴力行為に及ぶようであれば、詐欺行為を受けていることから被害届を直ちに提出して差し支えありません。
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