共有物分割請求訴訟の応用(不動産の共有者が多い場合)
昨日(9月7日)朝に放送されたテレビ朝日の番組(羽鳥慎一のモーニングショー)において、「明治時代に建てられた、朽廃した住宅があるが100人以上の相続人がいる。現在は誰も居住していない。市場価格は約2億円。相続人の一人でも取り壊しに反対すると取り壊しや売却はできない。現在は道路にはみ出していて危険なので周囲をフェンスで覆ったが、その費用は税金から支出した。」という内容の放送がありました。
そしてコメンテーターが「将来的には10年分の租税(固定資産税および都市計画税)を支払った上で国に物納する事が可能になる制度が始まるので、これを利用することが考えられる。」という内容の話をしていました。
しかし、10年分の租税を誰が払うのかという問題がある上に、そもそも賛同しない相続人がいる場合は物納できないので、解決策にはなりません。
相続人が100人以上も存在すると、誰がどのように相続しているかを調査するだけでも苦労しそうです。このような不動産でも「将来的には売れるだろうから、このまま何もしないで放置しておけばよい。」と考え、所有権の放棄に応じない相続人が多いと思います。
ましてや不動産価値が2億円であれば、相続人100人の場合には相続人一人当たりにおける平均の資産価値は単純計算で200万円になります。相続人の誰かが「取り壊したいので所有権(持分権)を放棄して欲しい。」とお願いしても放棄しない方が大半でしょう。
実は、相続人が誰なのか、および持分が判明すれば、市場価格2億円の土地をわざわざ国に寄付しなくても解決できる方法があります。
一人以上の相続人が、他の相続人に対し、共有物分割請求の裁判を提起すれば良いのです。相続人と持分を確定するのは一苦労ですが、これができれば何とかなります。
相続人の中には行方不明の方がいるかもしれませんが、訴状は公示送達(裁判所の入り口に約2週間貼り出す方法)により「相手に届いた」と見做されるので、裁判の進行に支障はありません。
共有物の分割に反対する相続人がいても、裁判期日に出廷しなければ民事裁判なので分割に反対しなかったものと扱われます。
分割に反対して出廷する相続人がいたとしても、訴えを提起した相続人は「分割に反対するのであれば、分割が成就した場合に私が受け取れる金額の金銭を支払ってください。」と請求できます。このため、分割に反対する相続人はほとんどいないと思われます。
そして共有物の分割を認める判決の確定後に不動産競売を実行してもらい、換価します。不動産競売により持分権を有する全ての相続人の所有権が競売の買受人に移転します。
不動産競売の手続きは確定判決に則ったものなので、相続人の一部が不動産競売の中止を求めることはできません。
その後、換価された代金は裁判所が預かり、必要費用を差し引いた後、最終的に全ての相続人に分配(配当)されます。建物の収去費用は、不動産競売における買受人が負担します。
共有物分割請求訴訟および不動産競売には、このような利用方法があります。お悩みの場合は不動産売買および不動産競売に精通している弁護士、または宅地建物取引士に相談する事をお勧めします。
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