住宅ローンで、賃貸住宅として運用する戸建住宅を購入してはいけません

住宅ローン減税の優遇制度
 住宅ローン減税の優遇制度が延長されていますが、優遇を受けられる期限がまもなく到来します。新築戸建て住宅の場合は令和3年9月30日迄、中古戸建て住宅の場合は令和3年11月30日迄に契約した物件に対し優遇制度が適用されます。

 戸建住宅を探している方の多くは、「減税の優遇制度を利用したいので、可能であれば早く探したい」とお考えだと思います。

 住宅ローン減税制度の詳細は、こちらのサイト(サイト1(国土交通省)サイト2(パンフレット))を参照願います。なお、減税が認められるため住宅が一定の要件を満たし、所定の期限までに入居することが条件とされています。

郊外の戸建住宅に対する人気が上昇
 新型コロナウイルス感染症の終息しないことから、東京都内では9月30日迄緊急事態宣言が発出されています。感染予防対策としてテレワーク推進が要請されていることから、事務系の社員をリモートワークに切り替える会社が増えています。出社は週1~2回程度であり、その他は自宅で仕事をする方が増えています。

 リモートワークが推進されたことから都心に立地する家賃が高額な賃貸住宅を借りる必然性がなくなり、郊外の戸建住宅を購入する方が増えています。また、郊外の方が都心よりも環境が良好であり、部屋数が多い物件を安く借りられるとして、郊外の広くて部屋数が多い住宅を借りる方も増えています。郊外では、賃貸戸建住宅に対する需要が急増しています。

 このため、郊外の戸建住宅を購入し、賃貸住宅として運用することをお考えになる方が増えています。問題なのは、初めから賃貸住宅として運用するのに「自宅として利用する」と偽り、金利が安く優遇税制も受けられる住宅ローンを利用して戸建住宅を購入される方がいることです。

 賃貸住宅として運用する目的で戸建住宅を購入する場合は住宅ローンではなく、事業用ローンを利用しなければなりません。しかし、事業用ローンを利用した場合、毎月の返済額は住宅ローンを利用する場合よりも高くなります。

 不動産会社の営業担当者に良い方法がないかを相談すると、「住宅ローンを申請すればよいです。賃貸用の住宅を購入する場合でも、誰でも普通に住宅ローンを申請して成約しています。利息も安いです。」などと言い、事業用ローンではなく住宅ローンの利用を勧めることがあります。

 もちろん、このような営業トークを行う営業担当者は質が良くなく、自分の営業成績しか考えていません。後述しますが、収益目的で賃貸住宅を購入する際には、戸建住宅であっても事業用ローンを利用しなければなりません。住宅ローンを利用すると大変な目に遭います。

賃貸戸建住宅を購入する際に、事業用ローンではなく住宅ローンを利用するとどうなるか
 結論から申し上げると、金銭消費貸借契約における「期限の利益」を喪失した旨を金融機関から通告され、融資した金額の一括返済を求められます。返済できない場合は、破産を申し立てられることがあります。

 「発覚した際には住宅ローンおよび事業用ローンの金利の差額を支払えばよい」等と勘違いされている方がいらっしゃいますが、金融機関側から金銭消費貸借契約が取り消されることから、差額の支払いだけで済む問題ではありません。

 購入した住宅が差し押さえられ、任意売却または競売により安く売却されることになります。それでも不足額が生じる場合は、物件を手放したとしても残額を請求され、場合により破産を申し立てられます。

 以前は、金融機関も融資を成約させることに前のめりで、ローンを成約させる課程で何らかの問題がある場合でも黙認してもらえることがよくありました。

 このような事案が発生しても、数年前までは金融機関から融資先にクレームを入れることは少なかったと思います。しかし、いわゆる「かぼちゃの馬車」事件が発生したことから、金融機関に対する金融庁および財務局による監視が強化されています。現在、金融機関は「不正は一切許さない」という態度を執るようになっています。

 住宅ローンを利用して賃貸住宅を購入したことが発覚した場合、ほぼ確実に金融機関から金銭消費貸借契約における「期限の利益」を喪失した旨を通告され、一括返済を求められます。返済できなければ自己破産に追い込まれます。

発覚する場合
 金融機関が現況を確認したい旨の郵便物が発送した際に発覚することがあります。このような郵便物は「転送不要」として発送されます。そして「宛所に尋ねあたらない」として返送されると、金融機関による調査が行われます。

 担当者が現地を訪問し、表札が所有者の名字ではない場合(賃貸住宅の入居者である場合)は、徹底的に調査されます。

 また、金融機関が営業区域が限定されている信用金庫、信用組合等の場合は、融資の担当者が融資先を予告なく訪問し、表札を確認しています。呼び出すことは稀ですが、定期的に確認しているといわれています。

 金融機関から融資を受ける期間は長期間です。不正な融資を受けると、長い間には必ず発覚すると考える必要があります。

 賃貸戸建住宅を購入する際に、住宅ローンを利用することは絶対に避けるべきです。