賃貸物件を退去した元入居者が勝手に戻り、生活し始めた場合
家賃の滞納を続けたことによりオーナー様から賃貸物件からの退去を求められた賃貸物件の入居者が、一旦は退去するものの、元の建物に戻り、勝手に生活し始める事案がたまに発生しています。
オーナーや管理会社の説得に応じて自主的に退去した方、裁判所による強制執行により退去させられた方のいずれにおいても元の建物に戻る者がいます。
酷い例になりますが、家賃の滞納が長期間続いたことから明け渡し請求を求める裁判を提起し、明け渡し請求を認める判決を得た上で強制執行を裁判所に実施してもらったものの、数日もしないうちに玄関扉を解錠し、何食わぬ顔で生活を始める輩がいます。
家賃の滞納が始まってから強制執行までには1年以上を要することがあります。その間、オーナー様は家賃収入を得られませんし、裁判費用が発生します。やっとの思いで強制執行を行ったにもかかわらず、退去させられた入居者が元の場所に戻ってきた際におけるオーナー様の落胆ぶりは筆舌に尽くしがたいです。
このような事案は、オーナーまたは管理会社による巡回の頻度が低い物件において発生します。
何食わぬ顔をして建物に戻り、生活し始める者の中には玄関扉の錠前を勝手に交換する輩がいます。オーナーまたは管理会社が室内の状況を確認するために解錠しようとしても解錠できず、入室できないことから不法侵入が発覚することが多いです。
元の入居者が戻ったことを見つけたら、警察に通報して解決するべきだが...
自主的な退去、強制執行による退去のいずれの場合でも賃貸借契約が解約されているのであれば、元の入居者といえども不法侵入者であると言えます。住居への不法侵入は刑法犯ですから、警察に通報することにより解決を図ることが可能です。
しかし、侵入者(元入居者)において「賃貸借契約は解約されておらず、居住する権限がある」と強硬に主張する場合は、オーナー様が警察から事情を訊かれることがあります。その際は賃貸借契約が解約されていることを客観的に証明する資料の提示を求められることがあります。
強制執行を行った場合は、裁判所が発行した強制執行調書が証拠になります。また、入居者が賃貸借契約の解約を任意に承諾したことにより解約が成立しているのであれば、解約したことを証明する書類が証拠になります。オーナー様から賃貸借契約の解約を申し渡した場合は内容証明郵便の控が証拠になります。入居者が自主的に退去したのであれば、退去届の書類、敷金などの清算書等が証拠になります。
いわゆる「追い出し屋」を利用すると、オーナー様が不利
賃借人に退去を求めても退去しないからといって「追い出し屋」を利用すると、追い出された入居者が戻ってきて生活し始めた場合に警察に協力してもらえないことがあります。
「追い出し屋」を利用して力ずくで退去させる行為は、法律が禁止する自力救済行為です。「追い出し屋」を利用して退去させた者が元の部屋に戻ってきたことを警察に相談しても、心証が極めて悪いことから相談に応じてもらえないことがあります。
相談に応じてもらえたとしても、賃借人に賃貸借契約の解約を一方的に告げて力ずくで追い出した場合は賃貸借契約の解約が無効である可能性があるとして、警察が動く案件ではないと判断されることがあります。この場合、元の部屋に戻った方が生活することを認めなければならなくなります。
さらに、「追い出し屋」を利用した追い出しを1回でも行った場合、裁判所に明け渡し請求を求める裁判を提起したくても裁判所書記官の心証が極めて悪いことから訴状を受理してくれないことがあります。
仮に訴状が受理されても、明け渡し請求を求める裁判は、オーナーにとって厳しいものになる場合があります。
「追い出し屋」については過去の投稿において、利用をお勧めできない理由を書きました。退去させた方が戻った場合に対応する手立てがなくなることも、利用をお勧めできない理由です。
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