満室時想定収入・利回りを過信してはいけない

 このブログの読者の中には1棟もののマンション、アパートの購入を検討されている方がいらっしゃると思います。購入する際には満室時想定収入および利回りに注目すると思いますが、不動産の広告(紙媒体、インターネット広告)に記載されている値を信用すると、大変な目に遭うことがあります。

満室時想定収入について
 広告に記載されている満室時想定収入は、必ずしも正確ではありません。特に、新築マンションの場合は注意が必要です。物件所在地における家賃の相場を自ら調べ、満室時想定収入を再計算する慎重さが必要です。販売会社や不動産会社任せにしてはいけません。

 質の良くない販売会社の場合、各部屋における想定家賃を過大に評価しています。どのエリアでも家賃には相場があり、相場を無視した高額な家賃が設定されている部屋に入居する方はいません。

 収益用1棟マンション(新築)の購入希望者募集広告において、家賃相場の1.7倍もの金額を想定家賃として満室時想定収入を算出している物件を見つけたことがあります。このような想定収入を信じて購入しても、想定通りの家賃収入を得ることはほぼ無理です。当然ですが、家賃を大きく値下げしないと入居者が決まりません。

 1.7倍の金額が想定家賃として設定されている物件において、家賃を相場に合わせるためには家賃を4割以上値下げすることが必要です。

 事業用ローンを利用して収益用不動産を購入した場合、家賃の値下げは返済が滞る原因になります。返済できないと期限の利益を喪失し、一括返済を求められることになります。この場合は任意売却により売却するか、裁判所が実施する不動産競売において売却することになりますが、ほとんどの場合に極めて低廉な価格で売却されることになります。

 物件を売却しても負債が残る場合、この負債は分割して何年にもわたり返済し続けなければなりません。自己破産を選択される方がいらっしゃいますが、職業により仕事を続けることができなくなる等の不利益が生じます。

収入の全てが利益になるわけではない
 利益は家賃収入から税金、物件の維持費、管理費、事業用ローンの返済額を差し引いた金額になります。注意が必要なのは、事業用ローンの月返済額です。この金額が大きいと、いわゆる「逆ざや」になり、賃貸経営が破綻する原因になります。

満室にすることは意外に難しい
 他に注意が必要なことは、その物件を「満室」にすることが可能かという点です。都心でも空室率の平均が1割を超えるエリアが数多くあります。2割を超えるエリアもあります。

 標準的な収益用1棟マンションの場合、空室率はそのエリアにおける需要と供給とのバランスで決まります。そのエリアに住みたい人の数が少なければ、空室率は上昇します。

 終息に向かいつつある感がありますが、コロナ禍が継続している現在、不動産会社が懸命に客付け活動を行っても都心の収益用不動産を「満室」にすることは至難の業です。「最後の1部屋における入居者が決まらない」と嘆かれるオーナー様が多数いらっしゃいます。

利回りについて
 実質利回りと想定利回りとの違いに注意が必要です。あくまでも個人的な感覚ですが、実質利回りは表面利回りの6~7割程度になることが多いです。事業用ローンの借入額が高額であり、利率も高い場合は3~4割になることがあります。

 実際に手元に入る収入がどのくらいになるかを厳密に精査する必要があります。