事故物件であることを告知せずに賃貸物件を貸した場合

 賃貸物件で人が死亡し、その態様がいわゆる「自然死」ではない場合、または特殊清掃を必要とした場合は、国土交通省が定めたガイドラインにより死亡事案の発生(または発見)時から3年間、入居者を募集する際に事故物件であることを告知しなければなりません。

 ところが、オーナー様の中には時々「事故物件であることを隠して入居者募集をして欲しい。」と言われる方がいらっしゃいます。事故物件であることを告知して入居者募集を行うと、家賃収入が減少するだけではなく悪い噂が立つことが多いからです。

 都心の交通至便なエリアにおける家賃収入は2~3割程度減少します。郊外の物件では4割以上減少することがあります。事故物件であることを告知すると賃貸不動産の運営が破綻するとして、不動産会社または管理会社に「事故物件であることを隠して入居者募集をして欲しい。」と頼むわけです。

 しかし、現在はインターネット全盛の時代です。全国の事故物件をまとめたサイト(「大島てる」等)があるので、いつまでも隠し通すことは極めて困難です。それに、事故物件であることを入居者が知らない場合でも、近隣に居住している方から情報が入ることがあります。

 事故物件であることを隠して入居者募集を行う行為は、宅地建物取引業法により禁止されています。このため、事故物件であることを告知しないで入居者募集をした不動産会社は、免許権者(都道府県知事または国土交通省)より事務停止、または免許停止の処分を受けることになります。

 そればかりか、事故物件であることを知らずに入居した賃借人は裁判を提起し、オーナー、不動産会社または管理会社に損害賠償を請求します。損害賠償請求の内容は、慰謝料、引っ越し代、および新たな賃貸物件への入居費用(礼金、仲介手数料)等です。

 事故物件における告知義務について、オーナー様の中には「幽霊など存在しない。法律が間違っている。」等と主張する方がいらっしゃいますが、日本国は法治国家であり、国が定める法律が告知義務を規定し、違反した場合の罰則を定めていることからこれに従うしかありません。

 私の会社では、オーナー様から「事故物件であることを隠して入居者募集をして欲しい。」と依頼された際には法律(宅地建物取引業法、政令など)の内容を説明し、お断りしています。