不動産一括査定サイトは遠からず終焉か?

 不動産を売却する際には一括査定サイトの利用が便利であるとするブログ、雑誌記事、不動産解説本が数多くあります。不動産会社を訪問することなく、自身が保有する不動産の価値を知ることが出来るとして、一時はもてはやされました。

 サイトの運営会社は一括査定に参加する不動産会社から参加費を徴収し、査定を依頼した方の情報を流します。不動産会社は無料で査定を行い、その結果を依頼者に伝えます。

 問題点の一つは「最も高い価格を提示した不動産会社に依頼者が集まる」として、意図的に実際の相場よりも2~3割程度上乗せする不動産会社が多いことです。

 私の会社は、一括査定サイトを利用した査定を一切行いません。直接依頼されたお客様に対してのみ、現地を訪問した上で査定し、市場流通価格に基づく査定結果を提示します。しかし、「こんなに安いはずはない。一括査定サイトではこの査定結果の3割増しだ。騙そうとしているんだろう。」等の暴言を吐いてお帰りになられる方がたまにいらっしゃいます。

 一括査定サイトでは他社よりも一番高い価格を提示することが有利であるとされています。高額な査定価格を提示して来店を促し、媒介契約を締結して販売活動を開始します。しかし、相場より高い価格を設定しても、購入希望者は現れません。1~2か月経過したところで徐々に価格を下げさせ、最終的には市場流通価格を大きく下回る価格で不動産買い取り業者等に買い取らせ、仲介手数料を両手取引で得る不動産会社が多いです。

 更に問題であると思うのは、一括査定サイトを利用した方の名簿が作成され、不動産会社に売られていることです。私の会社に、査定依頼者の名簿買い取りを打診してきた一括査定サイト(の関連会社)があります。この一括査定サイトは、テレビCMやネット広告で派手な広告宣伝活動を行っているサイトです。もちろん、丁重にお断りさせていただきました。

 一括査定サイトに査定を依頼すると、多くの不動産会社から頻繁に電話がかかり、数多くのメールが届きます。

 突然の訪問もよくあります。酷い話になりますが、不動産会社の営業担当が夜間に自宅の外で待ち伏せしており、勤め先から帰宅して自宅に入る際に「話をしたい」としつこく迫られたとか、断り無く勤務先に現れたという話があります。

 一括査定サイトの規約に「一括査定に参加する不動産会社による訪問は禁止している」等と記載されても信用できません。不動産会社の営業担当者には厳しいノルマが課されていることから、そのような規約が存在しても気にせずに訪問する営業担当者が多いです。

 一括査定サイトに登録されていない数多くの不動産会社から電話、メール、訪問等を受けることもあるようです。前述した、査定依頼者の名簿を買い取った不動産会社が行っているものと思われます。

利用者の防衛意識が顕著に
 一括査定サイトに査定を依頼したことから発生した事案がブログや掲示板等に報告されていることから、一括査定サイトを利用される方の防衛意識が高まっています。

 一括査定を依頼する際に登録する連絡先メールアドレスにはフリーのメールアドレスを登録し、査定結果を受け取った後はメールアドレスを廃止する、架空の電話番号を登録する、訪問をされても居留守にして相手にしない等の対応をする方が増えています。

 一括査定サイトで無料査定を請け負う不動産会社の多くは「無料査定を数多く行っても、査定結果を送付した後は依頼者に連絡できず、成約に結びつかない」という状況に陥っています。

 不動産会社の査定は無料ですが、実際には1件当たり数千円~1万円超の経費が発生しています。一括査定サイトに高額な参加費を支払い、多額の経費をかけて数多くの無料査定依頼を引き受けるにもかかわらず、成約に結びつかないのでは、一括査定サイトに登録する意味がありません。今後は一括査定から撤退する不動産会社が増えることが想定されます。 

 一括査定サイトの多くは曲がり角に差し掛かっていると言えそうです。現在のサイト運営方法では、そう遠くないうちに終焉を迎えるかもしれません。