賃貸物件においてペットの飼育を認める場合について
最近、ペット飼育可の物件を探す方が増えている感があります。また、「ペット飼育不可」の物件においても入居者から管理会社に「ペットを飼いたい」という要望が寄せられることが増えています。
ペット飼育を前提とした建物でなければペット飼育は推奨しませんが...
入居者によるペット飼育を認めることを前提として建てられた建物でないと、ペットの糞尿が床材および床下の柱や構造材を汚損します。酷い場合は階下の天井に落下し、天井にシミを作り、階下の入居者からクレームが出ます。
構造材を消臭するだけではペット臭が消えないことがとよくあります。場合により床材、構造材を丸ごと交換しなければならなくなります。
また、ペットアレルギーをお持ちの方があえて「ペット飼育不可」の物件を選び、入居している場合は、「ペット飼育可」にした時点で退去することがあります。そればかりか引っ越し代、新居への入居費用(仲介手数料、礼金など)を請求されることがあります。
以上の理由により、 ペットの飼育を前提として設計され、建築された賃貸物件でなければペット飼育可にすることは推奨しません 。
どうしても「ペット飼育可」の物件にする場合
近くにある、ライバルである賃貸物件がペット飼育を認めた場合は、対抗するために「ペット飼育可」にしたくなることがあります。また、既に入居している賃借人から「ペットを飼いたい」との要望が出されることがあります。
このような場合、賃借人から敷金を増額して徴収することが考えられますが、基本的に敷金は「預り金」であり、退去の際に未払い家賃および原状回復に要した費用を差し引いた上で返還しなければなりません。
ペット飼育を認めれば、室内にある程度のペット臭が付くことが避けられません。そして多くの場合に床や構造材が汚損します。必ずと言って良いほどに返還できない金銭が計上されますので、原則として返還を要する「預り金」である敷金を増額して徴収するのではなく、一定の金額を「損害賠償の予定」として「承諾料」の名目で徴収することが妥当と思われます。
従って、「ペット飼育に対する承諾料」に関する特約を設け、徴収することがふさわしいと考えられます。金額はペットの種類、頭数などにより個別に設定することになります。
入居者に守ってもらいたい規約を定める場合
ペット飼育に関する規約を設けることをお勧めします。東京都福祉保健局ではモデル規定を定めています。この中の「飼主の守るべき事項」が参考になると思いますので引用します。
飼主の守るべき事項(東京都福祉保健局のモデル規程本文)
第3 飼い主は、次に掲げる事項を守り、動物を適正に飼わなければならない。
1.基本的な事項
ア 動物は、自己の居室又は管理組合等により指定された場所(以下「指定された場所」という。)で飼うこと。
イ 自己の居室又は指定された場所以外で、動物にえさや水を与えたり、排せつをさせないこと。
ウ 動物の異常な鳴き声やふん尿等から発する悪臭によって、近隣に迷惑をかけないこと。
エ 動物は、常に清潔に保つとともに、疾病の予防、衛生害虫の発生防止等の健康管理を行うこと。
オ 犬、猫には、必要な「しつけ」を行うこと。
カ 犬、猫等には、不妊去勢手術等の繁殖制限措置を行うよう努めること。
キ 動物による汚損、破損、傷害等が発生した場合は、その責任を負うとともに、誠意を持って解決を図ること。
ク 地震、火災等の非常災害時には、動物を保護するとともに、動物が他の居住者等に危害を及ぼさないよう留意すること。
ケ 動物が死亡した場合には、適切な取扱いを行うこと。2.他の居住者等に配慮する事項
東京都福祉保健局
ア 自己の居室又は指定された場所以外で、動物の毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行わないこと。
イ 動物の毛や羽の手入れ、ケージの清掃等を行う場合は、必ず窓を閉めるなどして、毛や羽等の飛散を防止すること。
ウ 犬、猫等が自己の居室又は指定された場所以外で万一排せつした場合は、ふん便を必ず持ち帰るとともに、衛生的な後始末を行うこと。
エ 犬、猫等を散歩させる時には、砂場や芝生等(具体的な場所は、各集合住宅で定める。)の立入りを禁止された場所に入れないこと。
オ 廊下、エレベーター等では、動物は抱きかかえ、又はケージ等に入れ、移動すること。
カ エレベーターを利用する場合は、同乗者に迷惑のかからないよう配慮すること。
この他に、飼育できる動物の種類、頭数、飼育開始の手続きなどを定め、これらを賃貸借契約書における特約として記載します。これらを行うことにより、賃借人がペット飼育に関する何らかの問題を発生させた際における賃貸借契約の解約、損害賠償の請求が容易になります。
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