土地権利が借地権である1棟マンション・アパート、戸建(収益用)について
※お断り
本日の投稿に記載している割合および金額は、東京都区部における慣習を基準にしています。他のエリアでは慣習が異なるため記載内容と異なることがあります。
収益用不動産(1棟マンション、アパート、戸建住宅)の購入を検討している方から「利回りがとても良い物件を見つけたが、購入して良いか悩んでいる。意見を訊きたい。」と言われたことがあります。
確かに利回りがとても良好なのですが、土地権利が「借地権」でした。土地権利が借地権の場合は注意を要する点が数多くあります。詳しく書くと本が一冊書ける量になります。本日の投稿では概略のみ説明します。
1.金融機関による評価が低い
新たに借地権を設定する際は、土地を借りようとする方(借地人)が実勢価格(いわゆる市場流通価格)に借地権割合(国税庁が指定)を掛け合わせた金額を地主に支払い、借地権を設定します。その後、借地人は建物を建てて利用します。
借地権割合は、国税庁が公開している路線価図に記載されています。東京都区内の城南エリアでは6~7割に設定されているところが多いです。
借地人は契約条件に従い地代を毎月支払い、多くの場合に契約更新時に更新料を支払うことが必要になります。これらの支払を怠ると土地の賃貸借契約が地主により解約され、借地権が取り消されます。このために借地に対する金融機関の評価は低く、借地権を設定または取得する際に融資を受けたくても満足な金額を融資してもらえないことがよくあります。
2.売却時には借地の名義変更料が必要であり、キャピタルゲインが減少
借地権は売買の対象になります。土地権利が借地権である収益用不動産も売買の対象になりますが、売却する際に借地権の名義変更料を地主に支払う必要があります。この名義変更料は売主が支払うことが通常です。
名義変更料の相場は、東京都区内(城南エリア)では借地権価格の1割程度になることが多いです。なお、借地権の更新時期、地代、借地の所在地によりかなり異なり、借地権価格の2割を超えることがあります。
名義変更料は、借地が所在するエリアにある不動産会社に確認することをお勧めしますが、不動産会社の中には借地権取引には対応しないところがあります。借地権取引に対応しているかを不動産会社に確認し、その上で名義変更料を尋ねることをお勧めします。
3.借地契約の解約時に借地権を地主に買い取ってもらう際の買い取り価格は低くなる
前述したとおり、 新たに借地権を設定する際は、借地人が実勢価格(市場流通価格)に借地権割合を掛け合わせた金額を地主に支払い、借地権を設定します。 東京都区内(城南エリア)の場合、借地権割合は6~7割のところが多いですが、借地権を地主に買い取ってもらう際の買い取り価格は5割程度になることがほとんどです。
4.国策により借地権に対する融資が制限される恐れがあり、この場合は売却時に買い叩かれる
借地権は「国策」に振り回されている感があります。国としては「借地」をなるべく減らしたい思惑があるようです。現在は撤回されていますが、過去には金融機関に対して借地権の設定および借地権の譲渡に対する融資をしない、または極力制限するように通達をしたことがあります。
借地上に建つ収益用不動産を売却したいと思っても、この通達により買主に対する融資が承認されないため、なかなか売れない状況に陥った時期があります。現金一括で購入する買主を募るしかなく、結果として物件を買い叩かれる状況になりました。
現在はこのようなことはありませんが、借地の売買に対する融資制限がいつ復活するかわかりません。収益用不動産を売却したくても思うように売れなくなる恐れがあります。
5.建物の建て替え、増築時には承諾料を支払う必要がある
建物を建て替える、または増築する場合は建物の建て替え、増築に対する承諾料を地主に支払う必要があります。建て替えの場合における承諾料の相場は借地権価格の約1割、増築の際の承諾料は増築費用の約1割であり、かなり高額です。
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