住宅購入の際に、諸費用を含む全額を住宅ローンで借りることは可能か

自宅の購入を検討されているお客様から、購入費用および諸費用の全額を金融機関から借り入れることが可能かについて、よく訊かれます。

不動産の販売広告には、全額を住宅ローンで借り入れた場合の毎月返済金額が記載されているものがあります。このような広告を見た方は、現在住んでいる賃貸アパートや賃貸マンションの家賃と比較し、家賃を毎月支払うのであれば、住宅を買いたいと期待されるようです。

本日は、実務上それが可能なのかについて書きます。

諸費用

住宅を購入する際には、登録免許税、不動産取得税、固定資産税(日割額)、都市計画税(都市計画区域内の場合、日割額)、印紙税(契約書に貼付する印紙代)、司法書士報酬、仲介手数料、その他が必要です。以上が、住宅を購入する際に必要な諸費用です。

さらに住宅ローンを利用する際は、住宅ローン取扱手数料、適合証明書発行手数料(住宅金融支援機構が提供するフラット35を利用する場合)、印紙税(金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代)抵当権設定のために要する登録免許税、司法書士報酬、保証料および保証会社事務取扱手数料(連帯保証人に代わって保証を依頼する場合)、火災保険料、団体生命保険利用料(金利に含まれる事が多い)、その他が必要です。これらが住宅ローンを利用する際に必要な諸費用です。

購入する不動産の金額や金融機関、融資の条件により異なりますが、全てを合計すると、諸費用として物件価格の1割程度を見込んでおく必要があります。

頭金

頭金は、価格の5~10%の場合が多いです。この頭金は、契約の際に売主に支払う必要があります。また、諸費用の一部は契約時に必要です。

金融機関との交渉

住宅ローンの借り入れに関する交渉を銀行、または信用金庫と開始すると、頭金および諸費用は手持ち資金から支出して欲しい旨を伝えられることが大半です。つまり、不動産取得に要する総費用の15~20%程度は融資の対象から外したいといわれることが多いです。

それが困難である旨を伝えると、いわゆるノンバンク系の金融機関の利用を薦められることが多いです。銀行や信用金庫などの場合、審査をしてくれたとしても融資を断られることが多いです。

ノンバンク系の金融機関と交渉すると、「諸費用を住宅ローンでカバーすることは構わないが、頭金は手持ち資金から支出してもらいたい。返済利率はやや上がる。」と言われることが多いです。
頭金も融資の対象にならないかを尋ねると、「親族が所有する不動産に抵当権を設定させてもらいたい。共同担保とする。それが出来なければ融資できない。」といわれることが多いです。

多くの金融機関は、「5~10%程度の頭金、および諸費用を用意できない方は、ローンの返済が滞りやすい。」と考えているようです。銀行や信用金庫の場合は物件価格の8~9割までしか貸してくれないことが多いです。

仮に4,000万円の物件を購入する場合で物件価格の8.5割まで貸してくれるとします。この場合、3,400万円を融資してくれることになります。残金は600万円です。諸費用を1割と仮定すると、400万円です。
一時金として、諸費用と残金との合計である1,000万円が必要になります。諸費用を住宅ローンで支払うことを認めて貰えた場合でも、600万円は自己資金として用意する必要があります。

まとめ

仮に4,000万円の物件を購入する場合、600~1,000万円の自己資金が必要です。住宅を新規購入する際には、現在入居している賃貸住宅の家賃と、購入予定の住宅における住宅ローンの返済額がほぼ同額の場合でも、この点が問題になります。

親族の不動産にも抵当権設定が出来る場合でなければ、購入費用および諸費用の全額を金融機関から借り入れることはかなり困難です。借りられない分は、貯めた貯金から支出するしかないのが現状です。

良心的な不動産会社であれば価格交渉や頭金の金額に関する交渉をしっかり行い、なるべく低い返済利率で対応してくれる金融機関を探し、初期費用および毎月の返済額がなるべく少なくなるように努力してくれるはずです。