計画道路上に位置する1棟アパート、1棟マンション購入の是非

 駅近で利回りが良好な1棟アパート、または1棟マンションを見つけたので購入したくなったとします。敷地の一部が「計画道路」とされていることから価格が相場よりやや安く、利回りが良好です。本日は、このような収益用不動産を購入しても構わないかについて書きます。

 計画道路とは都市計画道路のことであり、将来において新たに道路を建設する、既存の道路を拡幅する等の計画がある場所のことを言います。通常は都市計画法が定める手続きにより道路の建設予定が決められ、道路の建設予定地は市区町村役場が作成する都市計画図に記載されています。

 計画が決定していても、工事が行われる時期が不明の場所が多くあります。30年以上前に計画決定されたものの、地価が高騰したことから予算を手当てできなくなり、工事がストップしている箇所が数多くあります。

 しかし、30年以上または50年以上前に計画道路として指定され、長年放置されていた場合でも予告なく工事の開始が発表され、立ち退きに向けた交渉が開始されることがあります。「道路用地として収用されるのは何十年も後のことだろう。安く購入できれば利回りが良いので購入した方が得だ。」と考えがちですが、注意が必要です。

敷地のどの部分が道路予定地かに注意

 確認する必要があるのは、道路予定地の位置です。購入を検討している物件の敷地が計画道路とされているものの、現状は駐車場、駐輪場、物置等であり建物を取り壊す必要がない物件があります。また、道路を建設する際には建物の取り壊しが前提となる場合があります。

 前者の場合は、駐車場等の利用ができなくなるとはいえ、住居としての利用には差し支えありません。敷地の一部が収用されるとそのエリアにおいて定められている建蔽率および容積率をオーバーし、既存不適格建築物になることがあります。しかし、建物の建築時に建蔽率および容積率を超過していなければ、行政から取り壊し命令が発令されることはありません。

 問題は、計画道路の位置が建物をまたいでおり、建物の取り壊しが前提とされている場合です。この場合、建物の取り壊し費用は行政が支出するものの、収用の対象となる敷地部分を除いた土地を行政が買い取ることは稀であり、多くの場合に三角形や台形などの不整形地が残されます。これらの土地を第三者に売却することは可能ですが、不整形地の場合、土地を売却したくても買い手を見つけることが困難になりがちです。仮に買い手が現れた場合でも売却価格はかなり低くなります。

 また、収用される部分の土地は原則として「公示地価」を基準として買い取られます。公示地価が決められた後に土地価格が急上昇した場合は、公示地価は実勢価格(市場流通価格)よりも低い金額になります。従って、この場合に行政から支払われる補償金は実勢価格よりも低い金額になります。

 収益用不動産における利益としてはインカムゲイン(家賃、共益費など)およびキャピタルゲイン(売却による利益)があります。計画道路上にある収益用不動産は価格が安く利回りが良好であり、インカムゲインは魅力的です。しかし、計画道路建設のために建物を取り壊すことが必要になる場合は思うようなキャピタルゲインを得られません。

 また、建物を取り壊す際には入居者に転居してもらう必要がありますが、入居者の属性により転居先がなかなか見つからないことがよくあります。この場合、補償金を得られるまでの期間が長期化することがあります。

 このため、計画道路が建設されても建物を取り壊す必要がない物件であれば購入の可否を検討して構わないと思いますが、道路建設の際に建物を取り壊すことが避けられない物件は、価格が安くても手出し無用であると考えます。

 繰り返しになりますが、数十年以上前に計画道路として指定され、長年放置されていた場合でも予告なく工事の開始が発表されることがあります。収益物件を購入した直後に計画道路の整備が始まると大変な事態になります。くれぐれもご注意ください。