収益用不動産を購入したら、家賃収入の全てを使い切ってはいけない
不動産会社から収益用不動産物件の紹介を受けると表面利回りに関する説明があると思います。表面利回りとは、年間の家賃収入(共益費を含む)を物件価格で割り、パーセント表記した値のことを言います。
実際には固定資産税、都市計画税、管理及び共用部の清掃費用、共用部(廊下・階段の照明、エレベーター等)の電気料、保険料、オートロックおよびエレベーターの年間保守料、その他が発生しますので、実際に得られる収入は年間の家賃収入から2割程度少ない金額(豪雪地帯では融雪費が発生するので更に少ない)になります。この金額を物件購入に要した費用で割り、パーセント表記した値を「実質利回り」と言います。
収益用不動産を購入する際にはこの実質利回りを提示され、「実質利回りから計算される○○○万円を毎年得られます」等のセールストークで購入を勧められることがよくあります。
毎年得られる金額を具体的に提示されると、実質利回りで計算される金額の全てが懐に入ると錯覚する方が多いです。しかし、全て費消すると後が大変です。
家賃収入を得た場合、その収入に応じた所得税を支払わなければなりません。オーナー様が法人の場合は売上高として計上し、必要経費を差し引いた金額に見合う法人税を支払う必要があります。
事業用ローンを利用する場合は、物件を購入した直後から毎月返済しなければなりません。物件価格の8割に相当する金額の融資を受け、年利が3%の場合は物件の利回りのうち2.4%相当額(3.0×0.8=2.4)を返済する必要があります。表面利回り5%の物件では、2.4%を差し引いた2.6%が「実質的な」表面利回りであると考えておく必要があります。
さらに各部屋における室内設備が故障した際には更新しなければなりません。具体的には湯沸かし器、バス、水洗トイレ、浴室換気乾燥機、エアコン、キッチンユニット、インターホン等が挙げられます。これらは概ね8年~12年に1回の頻度で更新しなければならず、部屋数が多い物件では更新費用が莫大になります。
エレベーターがある物件では定期的な更新が必要です。エレベーターの更新(リニューアル)費は、更新の内容および更新する部位によりますが1千万円を超えることがよくあります。設置から15年が経過したところで部分的な更新を行い、設置から30年程度したらカゴを含む全面的な更新を行うことが多いです。
設置してから10~15年以上経過したオートロック、および連動するインターホンが故障した場合は部品を入手できないことが大半です。この場合は全面的な更新が必要になります。
外壁塗装、屋上の防水塗装も定期的に必ず行う必要があります。こちらは10年毎に行うのが一つの目安になりますが、山沿い等で風雨が激しくなりやすいエリア、海辺に面した場所に立地している場合等はこれよりも短い期間で行う必要があります。
上述したとおり、収益用不動産を維持するためには建物および設備を維持する費用が発生します。表面利回りおよび実質利回りを算出する際にはこれらの費用を勘案していないので、家賃収入の全てを費消することは避けなければなりません。
東京都区内では収益用不動産の価格が異様に高騰し、表面利回り3%台の物件が登場し始めています。このような物件を購入した場合、家賃収入から得られる利益はほとんどないと言えます。
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