困った相談(その10、共有物分割請求)

 相続が何回も繰り返された結果、所有者がねずみ算式に増えている不動産があります。中には30人以上の共有者が存在する物件もあります。何年か前になりますが、このような土地の購入を打診されたことがあり、その際に当該土地の登記簿を見たことがあります。

 共有者が多い場合でも固定資産税および都市計画税は毎年発生し、安全配慮義務も求められます。多くの場合において、当該不動産は放置されている状態です。

 このような不動産を処分して売却したいという相談を受けることがあります。この場合、一部の共有者が他の共有者の持分を少しずつ買い取り、共有者が少なくなった時点で全ての共有者が売却に同意し、最終的に売却できれば最良です。

 しかし、現実には他の共有者の持分を少しずつ買い取るとしても相応の費用が必要であり、共有者の誰も費用を捻出できないことがよくあります。さらに、持分の買い取り価格に満足出来ない共有者が現れることがよくあります。共有者が数名以上になると交渉が極めて困難になることがよくあります。

 そればかりか、共有者の中に成年後見制度の適用を受ける被後見人が存在すると、事態はかなり複雑になります。被後見人が所有する不動産または不動産の持分については、本人(当該被後見人)や成年後見人が売却したくても裁判所が売却を許可しません。このため、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る場合でも、被後見人の持分に対する売買は法務局により否認されます。

 解決方法としては「共有物分割請求訴訟」があります。裁判所に「共有不動産の分割」を求める訴訟を提起し、話し合いで解決できない場合は地方裁判所が開催する不動産競売により当該不動産を売却します。不動産の売却は強制的に行われ、売却価格から裁判費用を差し引いた金額が各々の共有者に対し、持分に応じて分配されます。

 共有者の中に 成年後見制度の適用を受ける被後見人が存在する場合でも、共有物分割請求訴訟において分割を認める判決を取得できれば不動産競売を実行することにより換価処分が可能になります。

 なお、民事訴訟に不慣れな方は手続きを弁護士に依頼することをお勧めします。

 実際にいくらで売却出来るかは競売が実施されないとわかりません。残念ながら市場流通価格以下になることがしばしばあります。それに各々の共有者は裁判の判決により強制的に不動産を取り上げられ、売却されることから共有物分割請求訴訟を提起した共有者が他の共有者から恨まれることがあります。

 このような方法を紹介する不動産会社も逆恨みされることが稀にあるので、「困った相談」であると言えます。