困った相談(その11、占い師により売買契約の決済ができなくなった)
※知り合いの不動産会社で起きた事案です。プライバシーに配慮し、一部を加筆修正しています。
不動産(自宅)の購入希望者が内見、価格および条件交渉をした上で売主様と売買契約を締結しました。その際に、手付金として物件価格の5%を支払いました。住宅ローンを利用する金融機関と交渉し、融資のプラン(利率、毎月の返済額)を決めました。ローン審査を無事に通過したので決済日に金銭消費貸借契約を締結することにしました。
購入希望者は、「決済が終わった時点ですぐに引越をしたい。できれば決済日の翌日には引越をしたい。」と要望しました。ローン審査を無事に通過して決済日が確定しており、購入希望者が早めの引越を要望したことから売主様は一時的な仮住まいになる賃貸物件を借り、決済日に間に合うように引越を済ませました。
ここまでは順調だったのですが、購入希望者はこのまま家を購入して構わないかについて一抹の不安を感じたのか、駅前の露店で営業している占い師に占ってもらうことにしました。これが大騒動の始まりでした。
この占い師から「あなたが買おうとしている家には怨念が籠もっている。絶対に買ってはいけない。買ったら不幸になる。」と言われたとのことです。
購入希望者は「売買契約を撤回したい。占い師は、これから買う家には怨念が籠もっていると言っている。恐らく事故物件に違いない。事故物件であることを隠して売ろうとしているのだろう。手付金は全額を返して欲しい。」と主張し始めました。
売主は「この家は新築で購入した。人が亡くなったことはなく、断じて事故物件ではない。」と主張します。ネット上で検索しても、事故物件である事実は何も見つかりません。
購入希望者は、「何としても買いたくない。占い師が不幸になると言っているから買わない。」の一点張りです。不動産会社や売主よりも、駅前の露店で営業している占い師が言うことを信じており、どうしようもありません。
「不幸になる」と言い、自分のみを信じるように説得して多額の占い料を得るというのは、エセ占い師の常套手段です。
理由が何であれ、決済の拒否はただ事ではありません。売主は仮住まいとなる賃貸物件に引越し、引渡しの準備を完了しています。住宅ローンの審査も終了し、決済日も決定しています。この場合に売買契約を取り消すためには手付金の放棄では済まず、違約金の支払いが必要になります。通常、違約金は売買価格の20%に設定されています。また、この案件は買主都合によるキャンセルであり、仲介手数料(3%プラス6万円プラス消費税)も発生します。
「占い師が言っている『怨念』の意味がわからない。この家で人が死亡した事実はなく、事故物件ではない。物件を引き渡す準備が完了しているので売買契約を取り消す場合には売買価格の20%に相当する金額の違約金が発生する。5%相当額は手付金から充当するが、追加で更に15%相当額の支払が必要になる。さらに仲介手数料も請求することになる。」と説明しても「15%相当の現金は持ち合わせていない。仲介手数料も支払わない。占い師が『買ったら不幸になる』と言っているので売買契約は取り消す。手付金は返してもらう。」と主張するばかりでどうしようもなかったとのことです。
最終的には民事訴訟に発展し、売買契約を取り消す代わりにある程度減額した金額の違約金(約1千万円) を売主に支払うこと、および不動産会社に仲介手数料を支払うことで和解したようです。
多くの取引関係者がこのエセ占い師に振り回されて不愉快にさせられ、購入希望者は高額の違約金を支払うことになりました。駅前の露店で営業するエセ占い師が言うことのみを信じ、高額の違約金を支払ってまで売買契約を取り消す購入希望者はどうかしているとしか思えません。
高額の壺や印鑑を販売する宗教を信じ、多額のお布施をして破産する方が多くいる世の中です。エセ宗教やエセ占い師は人々を不安にさせ、自分のみを信じるように誘導して多額の利益を得るのが常套手段です。エセ占い師を取り締まることはできないのでしょうか?
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