困った相談(その23、管理費が安い悪徳管理会社)

 賃貸マンションを所有しているオーナー様からの相談です。

事案の概要

1.物件の管理をA管理会社に委託していた。委託内容は家賃の出納および督促、入居者からのクレーム受付、室内設備の修理が必要な場合における修理業者の手配と立ち会い、共有部の清掃である。
2.管理の費用は家賃収入の6%であるが、共有部の清掃費用はオーナーにおいて別途負担していた。
3.B不動産会社の担当者が訪問し、「管理費6%は高すぎます。弊社では管理費1.5%で引き受けます。ただし、空室が発生した際の賃借人募集を弊社に専任媒介で依頼してくれることが条件です。」と言われた。
4.2か月後にA管理会社との管理委託契約の更新時期が到来したが、更新を行わずにB不動産会社に管理を委託した。
5.オーナーの自宅に入居者から電話があり「エアコンが故障して動かないことをB不動産会社に伝えたが、対応してくれない」とのこと。この入居者がB不動産会社に再び電話をかけたら「オーナーに伝えてある」と言われた。エアコン故障の件は全く聞いていない旨を伝えた。
6.B不動産会社に確認したところ、「クレームを全部聞いていたらオーナーさんは破産しますよ。放置して構いません。エアコンが故障しても修理は必要ありません。不満があれば自分から退去します。そのときに対応すればよいのです。」と言われた。
7.他の入居者から「雨漏りのクレームを入れたところ、『オーナーに伝えます』と言ったきり、全く対応してくれない。 B不動産会社に確認したら『オーナーが対応しないのはウチの責任ではない』と言われた。オーナーの考えとして、雨漏りに対応しないのか。」と言われた。この件もB不動産会社からは何も聞いていない。

8.B不動産会社による管理をやめさせたいが、「管理委託契約を解約するなら違約金を請求する」と言われた。どうすれば良いか。

 このB不動産会社は管理費1.5% で管理を引き受け、入居者からのクレームを無視して入居者の早期退去を促し、専任媒介契約による新しい入居者募集を行い、仲介手数料を得たいのでしょう。オーナー様は管理費の安さに釣られたのでしょうが、安い管理費を提示して杜撰な管理を行い、入居者の早期退去を促して新たな借主募集に持ち込もうとする会社が増えています。

 現在はコロナ禍であることから入居者が退去すると次の入居者はすぐに決まりません。管理費が安いからといって管理会社を変えると空室率が上昇し、賃貸経営が行き詰まることがあるので要注意です。

 東京都区内の場合、管理を行う場合の原価は家賃収入の3~4%前後なので、管理費6%は決して高額ではありません 。十分な管理を行いながら管理費を企業努力で1.5%にすることはどう考えても不可能です。このような管理を安値で請け負う会社に管理を任せると、杜撰な管理(というか、家賃の出納以外には何もしない)をされることは明らかです。

 賃貸借契約を締結した場合、オーナー様は入居者が安全かつ平穏に生活させる義務を負います。夏期にエアコンの故障を放置したために入居者が熱中症で倒れた場合、オーナー様がその責任を問われる恐れがあります。管理を管理会社に任せていた場合でも、オーナー様が損害賠償を請求されることが想定されます。

 雨漏りを意図的に放置すると建物が傷み、修復不能になることがあるので早めに対応する必要があります。

 雨漏りや故障している設備を放置して修理しない場合は、入居者の中には家賃の支払を拒否したり、監督官庁に持ち込む方がいます。その結果、大きなトラブルに発展することがあります。

 最終的にはB不動産会社による管理をやめさせるしかありません。 B不動産会社が違約金を請求する場合は「管理業務を遂行していない」ことを理由として争うことになりますが、ある程度の違約金を支払わなければならないでしょう。

 「管理費が安い管理会社を推薦して欲しい」との相談がありますが、 管理費約5%の会社を推薦してもオーナー様から「高すぎる。安く管理してくれる会社があるはずだ。」と言われることがあります。管理費が安い管理会社の暗黒面を説明するのですが、納得されないオーナー様がいらっしゃいます。このようなオーナー様に説明するのは一苦労です。