円安が進む現在、収益用不動産の買い時はいつ?

 ご承知のとおり「異次元の金融緩和」が行われています。民間の銀行が日銀に預けている預金の金利はマイナス金利が適用されています。

 アメリカではコロナ禍を脱しつつあるので景気の回復が見込まれるとして金利を大きく上げてきています。日本では金利が低いままなのでいわゆるキャピタルフライトが急激に発生し、異様な円安になりました。日銀が為替介入をしましたが、効果は一時的であり1ドル144円前後という状況は変わっていません。

 異様な円安を止めないと輸入品の価格の急上昇を止められないので諸物価が高騰します。建築資材の価格も高騰しているので、今後新築されるアパート、マンション、事業用ビルの建設費は狂ったように上昇することが避けられません。すると物件の利回りが激減することになります。東京の西麻布で2023年に竣工する予定の、ある事業用ビルにおける表面利回りは2.01%とのことであり、異様に低いです。

 中古の収益用不動産も、賃貸住宅経営に対する他業種からの参入、および「老後は2,000万円以上が必要」というフレーズの一人歩きにより価格が急騰しています。都心の物件における表面利回りは3~5%程度であり、異様に低いです。

 数年前は、都心でも表面利回り8~10%程度の物件が多く存在しました。この程度の利回りの物件を「都心限定で探して欲しい」という要望を多くいただいているのですが、売主が強気であることからそのような物件は都心では全く存在しない状況です。

 更地を購入して新築する場合も建築資材が異様に高騰しているので表面利回りはかなり低くなります。コロナ禍になる前と比較すると3割以上上昇している部材があり、利回りを大きく低下させています。

 このような状況なので、「今は収益用不動産の買い時ではない。値下がりするまで少し待とう。」とお考えになる方がいます。「2~3年経てばコロナ禍が終息し、値下がりする。」と安易にお考えの方が多く、私の会社におけるお客様の中にも「値下がりするまでしばらく待つことにした。」と言われる方が増えています。

 円安を止める手立ては金利を上げることです。機関投資家が円を売ってドルを購入する理由は日米の金利差が大きいことです。金利を上げれば円売りドル買いの動きにブレーキをかけることが出来ます。

 金利を上げることについて政府日銀は難色を示しています。金利を上げると国債の償還に支障をきたし、民間における貸出金利も上昇するからです。しかし、金利を上げないと狂乱物価が止まらないので国民が疲弊します。

今後はさらに猛烈な円安になるか、金利が上昇する

 異常な円安が到来したことにより、外国から見た場合の日本の不動産や商品の価格は劇的に安くなりました。このため、円安が更に進行して1ドル150円、170円となり、円安の進行が止まりそうな状況が見えてきた時点で日本人が購入をためらっているのを横目で見ながら外国の投資家が日本の収益用不動産を片っ端から購入することが想定されます。

 日本の収益用不動産における表面利回りは低いです。しかし、外国の投資家は物件を長期間保有し、将来において円高に転じた際に高く売り抜けて大きなキャピタルゲインを得ることを考えています。利回りが低いためにインカムゲイン(賃料収入)がわずかであっても不動産を購入することにより資産価値を圧縮して節税することを考えています。また、金融機関からのローンを利用せずに全額をキャッシュで購入できるところでは表面利回りが3~5%程度しかない物件でも購入することが考えられます。

 また、政府日銀が方針を転換して金利を上昇させた場合、ローンを利用しなければ収益用不動産を購入できない方においては毎月の返済額が高額になりすぎるので、もはや手が届かない状況に陥ることが想定されます。

 最悪の状況は、今後さらに猛烈な円安に陥り、その後に円安を止めるために政府日銀が金利を大幅に上昇させることです。このようなことになると外国勢が収益用不動産を奪い合うことから価格は上昇し、その後に金利も上昇することになります。するとローンを利用して収益用不動産を購入することはほぼ不可能になるかもしれません。

 収益用不動産の購入を検討されている方を煽るわけではないのですが事業用ローンを利用して収益用不動産を購入するのであれば「今」しかないと思うのですが、いかがでしょうか。

 そうかといって、現在はコロナ禍が継続しており、コロナ禍の第8波とインフルエンザの流行とが重なる恐れがあるとの報道があります。コロナ禍が終息しないと空室率の増加に歯止めがかかりません。無理は禁物であり、「今は買い時ではない」との見解にも正当性があります。

 収益用不動産をこれから購入する場合、都心の物件における利回りはあまりにも低すぎるので、都心・横浜以外の物件を検討することをお勧めします。

※不動産の投資判断は自己責任にてお願いします。このブログの記載内容に則った投資判断を行い、損失が発生した場合でも、筆者および有限会社大森不動産は一切の責任を負いません。