買ってはいけない収益用不動産
このブログでは東京およびその近郊に立地する収益用不動産の利回りが極端に低下していることについて、何回か投稿しています。
東京都内に立地する中古の1棟アパートの場合、表面利回りが5.5%もあればそこそこ良好な利回りの物件と見做されています。数年前は表面利回りが7~10%程度なければ利回りが良好な物件とは見做されませんでした。
このため、高利回りの収益用不動産を新たに購入する方の中には再建築不可の土地上に立地する物件を購入する方がいらっしゃいます。しかし、火災により焼失すると建物を建築できず、土地を使用する方法がないので資産価値はマイナスになります。筆者の個人的な考えですが、購入はあまりお勧めしません。
収益用不動産の中には「あまりお勧めしない」というレベルではなく、「買ってはいけない」物件があります。本日は、買ってはいけない物件について説明します。
以下の項目のうち、「一つくらいであれば問題があっても構わないのではないか」とお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、妥協すると賃貸住宅の運営が破綻する原因になるので要注意です。
1.土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜崩壊危険区域内にある物件
これらの区域内にある物件はかなり安く売られていることがあります。高利回りであることが多く、お買い得な物件であるように思えますが、災害により入居者が死傷するとオーナー様が損害賠償責任を負わなければならなくなることがあります。
また、市区町村から移転勧告を受けることがあります。勧告に従う際は入居者に立退料を支払い、退去してもらう必要があります。
2.エレベーター、オートロックの更新時期が近づいている物件
更新時期が近いことから安く売られている物件があります。このような物件では更新費用を見積もり、これを勘案して購入の是非を検討しなければなりません。
物件価格に更新費用を加算して利回りを再計算すると、物件概要書に記載されている表面利回りよりもかなり低い利回りになることがほとんどです。
3.家賃を滞納している入居者がいる物件
家賃を滞納する入居者は、いずれ退去してもらうことになります。しかし、中には滞納したまま居座る入居者がいます。滞納が3か月以上続く場合は明け渡し請求を求める裁判を提起し、明け渡し請求を認める判決を取得してから強制執行を裁判所に依頼し、強制的に退去させることになります。
家賃の滞納が始まってから退去するまでには長期間(8か月~1年以上)を要し、裁判および強制執行を行う場合は相応の費用が発生します。法律上はこれらの費用を入居者に請求できますが、家賃を滞納する入居者は無一文同然であることがほとんどです。家賃保証会社による保証契約が締結されていない場合、裁判費用の全額をオーナー様が負担しなければならなくなります。
4.行方不明の入居者がいる物件
行方不明の入居者がいる物件も、購入を控えるのが賢明です。家賃が毎月支払われていても、家賃の支払いが突然止まることがあるからです。
特に行方不明の入居者が外国人の場合、家賃が突然支払われなくなることがあります。家財を置いたまま本国に帰国していることがよくあり、連絡方法も見つからないことから困惑されるオーナー様がいらっしゃいます。
5.線路際の物件
駅近の利便性が高いと思われる物件でも、入居者がすぐに退去することが多いです。また、空室が生じた場合における空室期間が長期化しがちです。想定表面利回りが高くても手出し無用です。
6.鳩等の鳥の糞でバルコニーが汚れている物件
バルコニーから野鳥に餌やりをする入居者がいる物件です。管理会社は注意しているのでしょうが、このような入居者は注意を全く聞き入れないのでしょう。
他の入居者に対する影響が大きいので、このような入居者は直ちに退去させる必要があります。多額の裁判費用等が発生することがあるので購入を避けるのが賢明です。
7.幹線道路沿いの物件
幹線道路沿いの物件は利便性を求める方には人気があり、空室が発生してもすぐに次の入居者が決まる傾向がありますが、入居後2年以内に退去する方が多いです。
原因は自動車による騒音と煤煙です。深夜に大型トラックが数多く通行する幹線道路に沿う物件で、特に交差点の近くかつ谷間にある物件の場合は入居者が短期間で退去しがちです。
8.眺望が良くない物件
眺望が全く利かない物件があります。例えば、眺望の全てが隣の建物の壁である物件、バルコニーに目隠しが設けられている物件です。
1階の部屋におけるバルコニーに「背の高い目隠し」を設けている物件があります。外部から見えないようにし、防犯を兼ねて設置するのですが、眺望の妨げになります。このような部屋は、空室が生じた際に次の入居者が決まりにくく、物件の利回りを低下させる原因になります。
9.嫌悪施設または騒音を発生する工場が近くにある物件
数は多くないのですが、バルコニーからの眺望の大半が墓地である物件があります。また、物件の前面道路沿いに葬祭場があり、喪服を着用した方や霊柩車が毎日のように前面道路を通行する物件があります。このような物件で空室が生じると、次の入居者はなかなか決まりません。
工場が近い物件も要注意です。土曜日および日曜日は静かなのに、平日の日中になると騒音でうるさくなる物件があります。このような物件では入居者が短期間で退去します。面倒でも平日の日中に現地を訪問し、確認することが重要です。
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