不動産を現金一括で購入される方へ
自身で居住されるために土地、戸建住宅、マンション区分所有権を購入される方の大半は、住宅ローンを利用して購入されます。1棟マンションや1棟アパート、賃貸用区分マンションを購入される方の多くは事業用ローンを利用されます。
ところが、会社勤めをしている長年の間に多額の貯金をすることに成功し、定年になり退職金をもらえたということで、不動産の新規購入または買い替えを検討される方がいらっしゃいます。多額の貯蓄をされている高齢者の中には御自身が亡くなった後に御子息が支払う相続税のことを考え、資産を見かけ上圧縮するために収益用不動産の購入をお考えになる方がいらっしゃいます。
現金一括で不動産を購入する際の注意
不動産を購入する際の決済方法が現金一括であり、ローン審査がない場合は金融機関によるチェックがありません。このため、以下の不動産を紹介されがちなので注意が必要です。
1.市場流通価格を大きく超える高額な不動産
どのような不動産であっても市場流通価格があり、これを大きく超える価格で売り出しても購入希望者は現れません。しかし、売主の中には市場流通価格よりもはるかに高額な売却価格を希望し、これにこだわる方がたまにいらっしゃいます。
特に「一括査定サイト」による査定を受けると、最も高額な査定価格が市場流通価格の2割または3割以上であることがよくあります。高額な査定を行った不動産会社が大手であると、その査定結果を盲信される方がいらっしゃいます。いくら説明しても「大手の査定価格だから間違いない。この価格よりも低い価格では絶対に売らない。」と豪語され、聞く耳を持たない方がいらっしゃいます。
売主が希望する価格で売却したくても、金融機関は独自に価格査定を行うので融資に応じることはありません。この状況で「購入手段が現金一括」の方が現れ、かつ営業担当の質が良くない場合、市場流通価格よりもはるかに高額なこの不動産の購入を勧めることがあります。
提示される不動産の価格が適正であるかについては十分に注意する必要があります。高値づかみをしたことに後から気がつき、対応を筆者に相談される方がいらっしゃいます。しかし、売買契約を締結して決済を行い、引渡しを受けた後に契約を取消すことは極めて困難です。
2.既存不適格建築物
都市計画区域内ではその土地に建設できる建物の建蔽率、容積率、高さなどが規定されています。建築時点における法令を遵守して建築されたものの、現在の法令に従うと建築が認められない建物であることがあります。
このような建物を中古物件(戸建住宅、マンション)として購入すると、建物の老朽化等による再建築の際に同じ規模の建物を建てられないことがあります。収益用不動産の場合には条例により再建築が出来ない土地があります。
大半の金融機関は、このような物件に対する融資に及び腰です。融資が認められても高めの利率を条件にされることが多いです。このため、現金一括による購入をされる方に紹介することがあります。
「買ってはいけない」とまでは言えませんが、再建築の際に支障が生じる恐れがあることを認識しておく必要があります。
3.任意売却物件
所有者がローンや借金を返済しない等の理由により抵当権が実行され、裁判所による不動産競売が実施されることが決定した物件があります。競売が実施される迄の間に購入希望者を募ることがあり、このような物件を「任意売却物件」といいます。
任意売却物件を購入する際は現金一括払いが必須の条件であり、ローンを利用出来ません。このため、任意売却物件を預かる不動産会社は、現金一括で購入できるお客様のみに物件を紹介します。
任意売却物件は市場流通価格よりも安価ですが、物件により金融機関が売却を許可しないことがあります。金融機関が「競売に持ち込んだ方が高値で売却出来る」と判断した物件は、購入を申し出ても断られます。任意売却物件は、代金を支払えば必ず購入できる不動産ではありません。
また、建物の場合は適切な維持が行われていないことがよくあり、購入後に多額の修繕費を負担する必要がある物件が多いです。
「買ってはいけない不動産」ではありませんが、多額の修繕費やリフォーム費用がかかることを認識しておく必要があります。
4.無届建築物(都市計画区域内)
このブログでは何回も掲載しているので 改めて説明することは不要でしょう。都市計画区域内で建築確認申請を行わずに建てられた建物であることが地方自治体に発覚した場合、建物収去命令を受けることがあります。価格がかなり安くても絶対に購入するべきではありません。
「これくらいのことは大丈夫です。」、「皆さん、気にしないで建てています。」、「発覚しても賃借人がいれば収去命令は出ません。」などのセールストークがよく利用されますが、全て「ウソ」です。地方自治体に発覚した際に多額の損害を被るのは買主様です。
「いつ取り壊されるかわからない」という精神的な不安を抱えながら不動産を所有することは避けるべきです。
都市計画区域内の無届建築物は、「買っていけない不動産」の代表格といえます。
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