東京都23区内の収益用不動産は、利回りが低いまま

 東京都23区内にある1棟マンションまたは1棟アパートの購入に関する相談で「利回り8%以上の物件に限定して探したい」とか「満室稼働中の物件に限定して探したい」と言われることがよくあります。

 東京都23区内で表面利回り8%以上の物件は、コロナ禍になる前は普通にありふれていましたが、現在はほぼ消滅したと言えます。たまに売り出されても数年以内に建て替えが必要なほどに老朽化が進行している物件、エレベーターの更新が数年以内に必要で更新費用は1,000万円を超える等の物件ばかりです。

 現在、東京都23区内の中古の収益用不動産における利回りは約4.5~5.5%です。新築物件の場合、表面利回りは3.0~3.5%程度です。

 「自分が欲しいのは物件における問題が何もなく、かつ都心にある高利回りの物件である。これを探すのが不動産会社の仕事だ。」等と言われることがありますが、「ない袖は振れぬ」のことわざの通りであり、存在しない物件を探すことは時間の無駄です。何と言われてもそのような物件は存在しないので仕方ありません。

 表面利回りが高い物件を欲しい場合は東京都23区内ではないエリアの物件を探すしかありません。なお、川崎市、横浜市の物件も利回りは次第に下がっています。

低利回りはいつまで続くか

 東京都23区内では、新たに売り出される中古の収益用不動産の数が激減しています。激減した理由は買い替え需要がなくなったことによります。現在、コロナ禍になる前に購入した収益用不動産を売却し、別の収益用不動産に買い替えると利回りが激減します。これでは誰も買い替えの意欲が湧きません。

 東京都23区内では売り出される物件の数が少ないので、利回りが5%程度しかなくても売れる状況に陥っています。これでは利回りが改善されることはなく、利回りが低い状態が続くことになります。

 当分の間、この傾向は続くと思われます。

高利回りの物件が欲しい場合はどうすればよいか

 東京及びその周辺における物件の利回りが非常に低いので様々な事が試みられています。少し前迄はリスクが大きいことから、実践する方は少なかった手法も行われるようになっています。

・地方都市でも人口が多くかつ利便性が良好なエリアに立地する物件を探して運用する
・敷地延長型の土地(いわゆる旗竿地)に建つ戸建住宅を安く購入して賃貸戸建住宅にする
・再建築不可の土地に建つ1棟アパートを購入して運用する(筆者の私的な意見ですが、推奨しません)
・いわゆる事故物件である1棟アパートを激安価格で購入して運用する
・田舎の誰も居住していない戸建住宅を極めて安く購入して賃貸戸建に転用する
・電線が通過する山を安く購入し、山に設置された電柱の利用料を収益とする

・田舎の土地を購入し、キャンプ場またはグランピング施設として整備し、運用する

 今後は他にも様々な方法が登場するのではないでしょうか。