「危険かも」と感じた不動産取引は取りやめるべき

 収益用不動産の購入に際しては極めて多額の金銭が動きます。「何としても取引を成功させたい」として強引な営業を行う営業担当が散見され、不安になった方から「このまま契約しても大丈夫か」という相談を受けることがあります。

 「お問い合わせ」のページに記載したとおり、筆者はいわゆるセカンドオピニオンを求める内容を受け付けないことにしています。しかし、どう考えても相談者が違法な取引に巻き込まれそうになっているとしか思えず、多額の損害を被る恐れが高い場合があります。この場合は「考えるヒント」を提示させていただき、その後は相談者の責任において判断していただくことにしています。

 不動産に関するセカンドオピニオンを欲しい方は、こちらのページを参照された上で相談機関と相談されることをお勧めします。

古典的な2つの不正な営業手法

 このブログでは過去に何回か投稿していますが、金額の異なる二種類の契約書を作成して金額の高い方の契約書を金融機関に提出し、実際の物件価格よりも遥かに高い金額を貸し出させる、いわゆる「書き上げ」といわれる行為があります。

 その他には収益用不動産の購入に際して「事業用ローン」ではなく「住宅ローン」を利用させようとする行為があります。住宅ローンの方が事業用ローンよりも審査基準が緩いので、収益用不動産を住宅ローンで購入させようとする営業担当がいます。

 いずれも古典的な方法であり、金融機関はこれらの不正行為に対して目を光らせているので、以前と比較すると成功率が低いようです。これらの古典的な営業手法は東京およびその近郊ではかなり少なくなっています。

最近、収益用不動産においてよくあるのは虚偽のレントロール提示

 賃料の欄を実際の賃料の3割増しにして表面利回りが良好であるように見せかけたレントロールに遭遇したことがあります。また、実際には入居者募集中なのに「現況満室」としたレントロールを見たことがあります。レインズでは入居者を募集している部屋が複数存在するのに「現況満室」としたレントロールが作成されているわけです。

 実際には空室だらけなのにレントロールに「現況満室」と記載されていたり、近隣の賃料相場から考えるとあり得ないほどに高額な賃料を徴収している旨が記載されていると、特に収益用不動産を初めて購入する方の中にはすっかり舞い上がる方がいらっしゃいます。営業担当から「急いで契約しないと他の方に先に購入されてしまいます。」等と言われるとすっかりその気になり、慌てて契約する方がいらっしゃいます。

 しかし、中には「おかしい」と感じた方がいらっしゃいます。この方は賃貸借契約書のコピーを閲覧したいと申し出たところ、「入居者の個人情報であるから見せられない」とか「賃貸経営のプロはそこまでしつこく確認しない」等のもっともらしい理由を掲げられて断わられたことから「ますます怪しい」とお考えになり、この収益用不動産の購入を取りやめたとのことです。

 「危険かも」とお考えになり、悩んだ末の大英断であったとのことでしたが、正解です。

一旦購入してしまうと、売買契約の無効を主張することは極めて困難

 詐欺に近いと言える営業手法が用いられたことから収益用不動産を購入した場合でも、売買契約の無効を主張することは極めて困難です。

 収益用不動産を購入する方は「事業者」であり、「消費者」ではないので消費者としての保護を受けることは出来ません。売買契約の無効を主張する際は「民事訴訟」を提起するしかないのが実情です。

 訴訟になった場合、裁判費用が発生しますし損失額の全額が補填されることはまずありません。「危険かも」と感じた不動産取引は取りやめることをお勧めします。