広域連続強盗事件、賃借人逮捕の際にオーナー様は
現在、不動産に関するニュースや記事があまり発信されなくなっています。報道は広域連続強盗事件に関する内容で埋め尽くされている感があります。
今回の広域連続強盗事件では、主に若者が実行犯として利用されています。コロナ禍が長期化したことから多くの若者が勤務先を解雇されました。解雇された若者は家賃等の支払、およびヤミ金融等から借りた金銭の返済に困り、いわゆる闇バイトに応募したようです。応募の際に個人情報や弱みを握られ、「従わないと家族に危害を加える」などと言われ、特殊詐欺や強盗を行うように強要されたようです。
指示役、またはその上位にいる誰かが反社会的勢力、おそらくは暴力団の構成員または幹部であることは間違いありません。指示役は「タタキ(強盗の意)はやれるか」とか「格闘技や武術の経験はあるか」等を闇バイトの応募者に質問したようです。そして、「やれます」と言った者が今回の連続強盗に参加したようです。
強盗殺人罪および強盗致死罪の量刑は死刑又は無期懲役です。強盗致傷罪は6年以上の懲役です。指示役から強要されたために強盗を行った事情があるとしても、被害者が死傷した場合は相当に重い刑罰を科されることになります。罪の意識を持たず、平気で強盗を行える神経は、筆者のような常人には理解できません。
本題
オーナー様が所有されている賃貸物件の入居者が広域連続強盗事件の容疑者として逮捕された場合に、オーナー様はどのように対応するべきかという問題があります。
警察が入居者を逮捕した場合、その時点で当該入居者に直ちに退去を要求できるとお考えになるオーナー様が多いです。しかし、直ちに部屋の明け渡しを受けることは困難です。現場検証が終わるまでは、警察関係者以外の立ち入りは一切禁止されます。現場検証は一日だけでは終わらず、何日か続くことがあります。
犯罪に関係する可能性がある物品やスマートホン、パソコン等がある場合は証拠品として押収され、搬出されます。室内の物品は入居者の私物なのでオーナー様といえども勝手に搬出することは許されません。
現場検証が終わっても、お部屋の明け渡しを受けていなければ占有権は依然として借主にあります。オーナー様が合鍵を保有していても部屋に立ち入ることは認められません。
強盗事件の容疑者として逮捕され、裁判で有罪とされた場合における懲役刑の服役期間は長期間です。家賃が支払われている場合でも、今後は家賃の支払いが滞ることが容易に想定されます。
室内には衣類やカバン等の私物、テーブル・イス等の家具類、食器、その他が残されています。その所有権は依然として借主にあります。警察に出向いて借主に所有権の放棄(所有権放棄書への署名、捺印)をしてもらうことが必要です。
オーナー様としては室内に立ち入り、借主の私物を廃棄したくなると思いますが、このような行為は自力救済であり違法です。
部屋を明け渡してもらうためには借主による占有を解かなければなりません。借主が警察に逮捕された時点以降、家賃の入金がストップすることが大半です。このため、家賃滞納を理由として賃貸借契約を解約し、裁判上の手続きにより借主による占有を解きます。
具体的には明け渡し請求を求める裁判を提起し、請求を認める確定判決を得ます。期間は3~6か月程度です。その後、強制執行により室内の物品を移動させます。なお、強制執行の申し立て後、執行が完了する迄には最低で2か月を要します。
強制執行では解錠技術者、立会人、執行補助者の日当、倉庫の利用料、保管期間終了後の物品廃棄費用などが発生します。費用の総額は弁護士費用を含め、100万円以上になることがあります。
空室期間は6か月~1年以上になることが多いです。強制執行に要した費用は借主に請求できますが、ほとんどは無一文同然です。このため、家賃保証会社を利用していない場合は費用の全額をオーナー様が負担しなければなりません。
入居者が犯罪の容疑者として逮捕されると賃貸住宅の運営事業が破綻することに繋がりかねません。賃貸物件の入居審査は極めて重要です。
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