不動産を購入する場合、携帯電話を利用できるかに注意

2023年5月12日

 最近、特に郊外の賃貸用戸建住宅に対する需要が伸びています。若い個人投資家が朽廃しかけた戸建住宅を安く購入し、DIYにより再生させて高利回りの賃貸住宅として貸し出す例が紹介されています。

 また、朽廃した古い1棟マンション・アパートを再生させて収益用不動産として運用する方がいらっしゃいます。しかし、携帯電話を利用できるかについて確認する必要があります。

携帯電話を利用できるかについて見落としがち

 携帯電話の電波が弱くて途切れる、または圏外の表示が出て通話が出来ないエリアがあります。困ったことに、このような現象は特定の携帯電話会社を利用している場合に発生することがあります。ある携帯電話会社のスマートホンでは問題なく通話やネットの閲覧が可能なのに、他の会社のスマートホンでは通話が出来ないとか、通信が途切れるというパターンです。

 携帯電話の電波を拾うアンテナ設備が物件の近くにないと、このような現象が発生します。多くの場合、携帯電話のアンテナ設備は各電話会社の共通設備ではありません。このため、特定の携帯電話会社のみに支障が生じることがあります。

重要事項説明の際に、説明されないことが多い

 特定の携帯電話会社に限り「圏外」になる場合でも、重要事項説明書に反映されないことが多いです。

 宅地建物取引業法および政令は、説明が必要な項目を細かく規定しています。しかし、「圏外」になるために利用できない携帯電話会社がある場合でも、そのことに関する説明は必須説明事項とされていません。このため、賃貸物件、売買物件のいずれの場合でも説明されないことがあります。

 不動産会社が「圏外」になる携帯電話会社を調査することは容易ではありません。携帯電話の実機を持ち込んで判定するしかないので、全ての携帯電話会社について通話可能かをチェックすることは困難です。また、「普段は利用できるが時々途切れる」等の場合もあり、どのように説明するかが問題になります。

 「賃貸借契約を締結して入居したところ、携帯電話が『圏外』で利用できない。重要事項説明の際に、携帯電話を利用できない旨の説明はなかった。」というトラブルは多く発生しています。

どの携帯電話会社でも繋がらない場合は深刻なトラブルに発展する

 利用している携帯電話会社がアンテナを設置するなどの対応をしてくれれば良いのですが、対応してくれないことがあります。すると、賃借人が「他の物件に転居するので引っ越し費用と迷惑料をもらいたい。さらに仲介手数料、敷金、礼金の全額を返金してほしい。」と要求することがあります。

 売買物件の場合は、更に深刻なトラブルになることがあります。売買契約が成立した場合、取消しは契約不適合責任の追求として行いますが、困難が伴います。

 買主が取消権を行使したいと申し出た場合、仲介手数料の返金だけではなく、所有権を売主に戻す所有権移転登記が必要になります。不動産取得税、登録免許税、司法書士費用等も支出しなければならず、しかも高額になることが多いです。

 住宅ローンを利用して購入した物件の場合は、既に設定された担保権(抵当権、根抵当権)が問題になります。取り消しには費用が発生しますが、誰が負担するかが問題になります。

 以上の理由により売主や売主側の不動産会社が取消権の行使に簡単に同意してくれることはほとんどなく、最終的には民事訴訟で解決することが多いです。

大都市と同様に、携帯電話をどこでも利用できると考えると大変な目に遭う

 物件の購入、または借り受けの際は自分の携帯電話を利用できるかについて確認することを強くお勧めします。

 利用できない携帯電話会社が判明している場合があるので、不動産会社にあらかじめ確認しておくこともお勧めします。