収益用不動産、区分マンション一室のみの運用は危険

 「これから収益用不動産の運営を始めたい。」という方からの相談がよくあります。

 「1棟マンションや1棟アパートを購入できるだけの資金がない。単身者向けの区分マンションを一室だけ購入したい。」、「収益用不動産の運営は初めてなので区分マンションを一室だけ購入し、経験値を上げたい。」等と言われる方が多いです。

 また、法人を立ち上げたばかりの方から「コロナ禍の影響で売上げが全く出ない。手持ちの現金は2,000万円ある。銀行から5,000万円程度の融資を受け、7,000万円前後のファミリー向け区分マンションを一室だけ購入して運用したい。この運用で経験を積んでから1棟マンションを購入したい。」と相談されたことがあります。

 どうやら区分マンションの運営を「収益用不動産運営の入門」と位置づけている方が多いようです。しかし、この考えは誤りであり、極めて危険です。

空室、滞納、行方不明、事件発生のリスクに耐えられない

 区分マンションを一室のみ購入した場合、空室になると賃料を全く得られません。空室でも毎月の管理費および修繕積立金を徴収され、次の入居者を募集するための仲介手数料等が発生します。事業用ローンを利用して購入した場合は、家賃収入がなくても所定の金額を毎月返済しなければなりません。

 空室リスクだけではなく、滞納リスクもあります。家賃保証会社と借主との間に家賃保証契約が締結されていれば、オーナー様は滞納家賃の代位弁済を受けられます。しかし、滞納期間が長期にわたり、退去を求めても応じず居座る賃借人がいます。この場合は明け渡し請求訴訟を提起し、判決を得て強制執行により明け渡してもらうことになります。

 裁判および強制執行の費用は賃借人に請求できます。しかし、ほとんどの場合に賃借人は無一文同然なので、オーナー様が負担するしかありません。

 賃借人が行方不明になることがあります。特に外国人に多いのは、家賃を滞納したまま室内に私物を置いて帰国することです。

 事件が発生することがあります。ファミリー向けマンションの場合、振り込め詐欺の拠点、栽培が違法である植物の栽培場所、賭博場にされることがあります。警察が踏み込み、容疑者が逮捕される事態になると明け渡しを受けられるまでに半年~1年以上を要することがあります。その間の家賃収入はありません。

 家賃が入金ぜず、賃借人に電話をしても出ないので訪問したら室内で死亡していた事案があります。警察による現場検証が行われた場合、オーナー様も事情を訊かれることがあります。

 これらの場合、収益用不動産運営の初心者はどうしたらよいかわからないことが多いと思います。不動産会社に相談しても、貸室に関する管理契約を締結していなければ冷淡な対応をされることがあります。

 1棟マンションやアパートにおいて空室、滞納、事件が生じても他室から得られる賃料でやりくりすれば何とかなることが多いです。しかし、運用しているのが区分マンション一室のみであると、賃料収入がゼロになるので深刻な経済的なダメージを受けます。事業用ローンの返済が出来なくなると破滅を迎えることになります。

 区分マンション一室のみの運用は極めて危険です。