「任意売却物件」の問題点(その1、情報源が限定される)

 土地や住宅の購入を検討している方から要望をお尋ねすると「安く売られている物件の情報が欲しい」、「駅近にあり築浅の物件に関する情報が欲しい」、「不動産競売にかけられる寸前の物件を紹介して欲しい」等と言われることが多いです。

 この中の「不動産競売にかけられる寸前の物件」が「任意売却物件」と言われるものになります。不動産を住宅ローンまたは事業用ローンを利用して不動産を購入する際は、当該不動産に抵当権または根抵当権が設定されます。

 何らかの理由により毎月のローンの返済が出来なくなると抵当権者である金融機関、またはサービサーにより抵当権が実行されます。最終的には地方裁判所が開催する不動産競売により売却されます。

 しかし、競売開始決定後、競売が実施されるまではある程度の日数があります。この間は「任意売却物件」として販売活動が行われることがあります。

任意売却は、必ず行われるとは限らない

 任意売却が成立するためには不動産の所有者および抵当権者(金融機関やサービサー)が売却に同意していることが必要です。

 不動産の所有者が不動産競売にかけられる理由を納得していない場合は、所有者が不動産の売却を拒みます。また、不動産競売にかけた方が高く売却出来ると予想される場合は、抵当権者が任意売却を拒みます。これらの場合は任意売却が行われず、不動産競売が実施されます。

任意売却物件に関する情報源は極めて限定される

 不動産業に携わらない方から「任意売却物件の一覧表が欲しい。提供してもらえないか。」という問合せをいただくことがあります。しかし、任意売却物件の情報は抵当権者(金融機関、サービサー)、弁護士、売却を依頼された不動産会社のみが有します。極秘情報として扱われ、第三者への情報提供は絶対にしないように求められます。

 不動産会社同士の間でも、情報の提供は慎重です。10年以上お付き合いをしている他社の営業担当者であっても、情報を提供して問題が発生しないかを慎重に検討する必要があります。もちろん情報がポータルサイトに掲載されることはありません。

 情報を制限する理由は、金融機関を激怒させて今後のお客様に対する融資に悪影響を及ぼすと困るからです。情報の提供を受けた方が金融機関に直接問合せをすると収拾が困難な大問題になります。

 それに任意売却物件に関する情報は刻々と変わります。不動産の所有者が自ら買主を見つけ、1週間程度で任意売却が成立することがあります。その多くは親、きょうだいや友人による現金一括購入です。

 一覧表を作成しても翌日には無意味なものになることが多いので、筆者の不動産会社では一覧表を作成していません。他社でも作成していないところがほとんどです。

 筆者の会社が不動産の所有者から任意売却物件の売却を依頼されることはほとんどありません。情報源は長期間お付き合いをしている他の不動産会社の営業担当、および弁護士です。

 任意売却物件に関する情報源は極めて限定されています。