内見をしない不動産取引は危険

内見をせずに不動産取引を行う方が意外に多い

 最近、不動産の内見を省略することを条件として仲介手数料を無料にする賃貸物件(アパート)があります。内見を行う手間を省きたいし、仲介手数料を節約したいとしてこのような物件に入居すると後悔するかもしれません。

 また、1棟ものの賃貸アパートや賃貸マンションの購入希望者が共用部や空室の内見を断られたという話をよく聞きます。質の良くない営業担当から「不動産投資のプロは内見をせずに購入しています。」等のウソを言われることがあるようです。

 美辞麗句を並べられ、「早く買わないと他の方に先に買われてしまいます。」等と言われると、内見をせずに購入する方がとても多いので驚きです。数千万円~数億円もする不動産を内見することなく購入する方が実際に数多くいらっしゃるので不思議です。「他の方に先に買われたら自分が損をする。」と錯覚しているとしか思えません。

賃貸物件を借りたい方が内見を省略した際の問題

 よく問題になるのは眺望や部屋の狭さです。「隣の建物の壁しか見えない」とか「思ったより部屋が狭い」と感じても、契約後ではクレームを付けられません。

 また、設備に関するトラブルが発生しがちです。入居後に貸室のクロスが剥がれていたり、窓ガラスや洋式便器にひびが入っているのを見つけたとします。「大したことではない」として放置したところ、何年か後に退去する際にこれらの修繕費を請求されることがあります。

 「自分が破損したわけではない」と主張しても「入居直後に申告しない借主に非がある」として敷金の返還に応じてもらえず、トラブルになることがよくあります。

収益用不動産を購入する際に内見を省略した際の問題

 よくあるのは建築確認申請および完成検査済証に記載された通りの建物ではないトラブルです。建築後に増改築を繰り返しているものの、増改築に関する建築確認申請を行っていない建物があります。このような物件は、内見の実施により見抜けることが多いです。

 増改築の際に建築確認申請および完成検査を実施していない建物では、売却時に事業用ローンを利用できません。このため、本来であれば資産価値は低くなります。しかし、内見をしないで購入すると減額査定をしていない価格で購入してしまうことがあります。いわゆる高値づかみする恐れがあります。

 鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造の建物では雨漏りに注意する必要があります。定期的に行うべき防水塗装や防水膜の貼り替えを怠ると最上階で雨漏りが発生します。放置すると鉄芯が錆び、コンクリートの柱や梁が爆裂してひびが入り、建物の強度が著しく低下します。爆裂した柱や梁の修繕は困難であり、最悪の場合は解体および再建築が必要になります。

 このような建物の場合、内見をしないように仕向けて高値で売却しようとする、質の良くない営業担当がいるので注意が必要です。

 建物の問題だけではなく、土地に関する問題を見過ごすことがあります。よくあるのは「再建築不可」の土地であったというトラブルです。他人の土地を通らないと道路に出られないとか、いわゆる旗竿地(路地状敷地)に建築された建物で通路の幅が狭い等です。

 旗竿地の場合、必要とされる通路の幅は地域の条例により異なります。戸建住宅では2mですが、集合住宅の場合は建物の規模により条例がそれ以上の幅を規定していることが多いので確認が必要です。

 ゴミ置き場や駐輪場が異様に荒れている物件があります。だらしない賃借人が数多く入居し、家賃の滞納や近隣トラブルが生じがちな物件であることがよくあります。

 賃貸、売買のいずれでも内見をしない不動産取引は危険です。