借地権の更新時に更新料を支払わないとどうなるか

 土地賃貸借契約が旧法借地権または普通借地権の場合には契約期間があります。土地の賃貸借契約を更新する際には原則として更新料の支払を求められます。貸主および借主の双方が契約更新をしない場合は法定更新となり、従前の契約内容が存続します。

 最近、大都市では土地の実勢価格が急騰したことから土地賃貸借契約の更新料が多額になり、一括で支払えない借主が増えています。更新料はエリアおよび地主の考えにより大きく変わります。一般的には借地権価格の5%前後ですが、裁判では更地価格の3%とした例があります。筆者の会社がある東京都目黒区では路線価の8%前後としているところが多いようです。

 東京などの大都市では一般的な戸建住宅でも数百万円程度になることが多いので、「支払えない」としてトラブルになることがあります。

 更新料については最高裁の判例(最判平23.7.15)があります。「更新料は賃料とともに賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。」と判示しました。この最高裁判例は建物賃借権に関するものですが、借地権にも類推適用できると考えられます。

 このため、借地人が更新料を支払わない場合に地主が土地賃貸借契約の更新を拒絶しても合法です。法理論としては借地人が更新料を支払わないと土地賃貸借契約は終了し、借地権は消滅することになります。

契約更新時に借地権が消滅した場合、地主は建物を買い取らなければならない

 契約更新時に土地の賃貸借契約が終了した場合、借地人が地主に対し建物買取請求権を行使することがあります。地主は借地人が建てた建物を買い取らなければなりません。

 通常は建物の買取後に解体して更地にします。建物の規模が大きい場合は解体及び整地の費用が莫大になります。地主において多額の出費になることが多いので注意が必要です。

地主においては土地賃貸借契約を存続させる方が得であることが多い

 借地人が更新料を支払えない場合でも、土地賃貸借契約を存続させることが地主において得であることがあります。

 前述したように、借地人が建物買い取り請求権を行使すると、地主は建物を買い取らなければなりません。その費用の他に買取後に行う解体、整地の費用が発生します。さらに次の土地賃借人を見つけるには相応の日数を要します。その間の地代は入金しません。

 また、次の借地人を紹介してもらうために不動産会社に対する仲介手数料が発生します。借地権を設定する際は、借主が借地権の設定費として実勢価格の5~8割(エリアにより異なる)を地主(貸主)に支払います。仲介手数料は、借地権に関する設定費の3%に6万円を加えた金額に消費税を加算した額です(400万円を超える場合)。地代の半月または1か月分ではないことに注意する必要があります。

土地賃貸借契約を存続させる場合

 更新料の減額または免除を行い、地代の引き上げを借地人に承諾してもらうのが通常です。更新料の部分を地代に上乗せすることにより支払いを求めます。更新料を実質的に遅延して支払うことになるので、地代を決める際には利息部分をどのように定めるかが問題になります。これは地主および借地人の双方が話し合い、決定するのが通常です。