現況居住中の住宅を購入する際は売主の不退去に注意

 ご承知の通り、建築資材の価格が異様に高騰しています。このため新築物件の価格が異様に高騰化しています。

 当初は新築物件の購入を検討していた方でも新築物件の購入を断念し、中古物件を探す方が増えています。特に希望エリアが狭い購入希望者にその傾向があります。1億円を超える高額物件でも、駅近、築浅等の好条件が多い物件であれば中古でもかなりの需要があります。

 中古物件を探す場合は土地や建物のチェックを十分に行う必要があります。このことは不動産会社におけるWEBサイトにおいて数多く取り上げられています。十分に理解されている読者が多いと思うので割愛します。

 本日の投稿では、現況居住中の売物件においてしばしば発生する売主の不退去について説明します。

売主の不退去に関する問題

 典型的な事例は以下の通りです。

事例

 現況居住中の戸建住宅を購入することにし、明け渡し猶予期間を3か月と定めた上で売買契約を締結し、決済まで済ませました。その後、明渡猶予期間として定めた3か月が経過しましたが、売主が退去に応じません。
 売主は、「住宅の売却後に入居を予定していた住宅に入居出来なくなりました。購入する物件が決まり、引越が完了する迄待ってください。」といいます。引越の時期を尋ねても回答を拒み、「しばらくこのまま居住させてください」の一点張りです。
 最近は電話をかけても即時に切られます。明け渡しを求める内容証明郵便を差し出しても無視されています。
 売買代金は全額売主に支払い済みであり、所有権移転登記も済ませています。退去してくれるまでこのまま何ヶ月、あるいは何年も待たなければならないのでしょうか。

 このような事例は、現況居住中の物件においてしばしば発生しているのが現状です。売主において多額の借金を抱えており、支払われた代金を借金の返済に充当し、物件の引渡しを拒む等が典型的なパターンです。

 仲介を行う不動産会社が売主の詐欺を予想することは極めて困難です。仲介を行う不動産会社は、売主に対し売却の動機、および売却後の引っ越し先を確認します。しかし、ウソをつかれたらそれまでです。

 仲介を行った不動産会社に落ち度がない場合、不動産会社に損害賠償を求めることは極めて困難です。また、売主が自らの意思で物件を明け渡すことは期待しない方が良いと思われます。

 買主としては明け渡しを求める訴訟を提起し、勝訴判決を得た上で強制執行の手続を執る必要があるかもしれません。

 売主は占有権原がない無権利者です。このため、裁判を提起すればほぼ確実に勝訴できます。ただし、売主が「家賃を支払う」と提案された際に買主が拒否していることが要件になります。「家賃を支払うので明け渡しを待って欲しい」等の姑息な提案をする売主がたまにいます。

 賃貸借契約書を作成していなくても、家賃の支払いが行われていると口頭による賃貸借契約が締結されていると見做されます。すると売主が借地借家法で保護され、買主は退去を要求できなくなります。

 買主は裁判費用および強制執行に要した費用を売主に請求できます。しかし、売主が無一文同然の場合は買主が負担しなければなりません。

 現況が居住中の住宅を購入する際は、上記のリスクがあることを考えておく必要があります。手持ち資金の全額を不動産購入に充当すると、このようなトラブルが発生した場合に対処できません。手持ち資金をある程度残した上での住宅購入を強くお勧めします。