相談されても無理な話(一括査定以上の価格で売りたい)

 不動産の売却を検討して来店されるお客様の中に、ネット上で「一括査定」を依頼したという方がたまにいらっしゃいます。一括査定サイトの問題は、一括査定における最も高い査定結果が一人歩きすることにあります。相談者の中にはこの価格を基準として捉え、この価格よりもさらに高い価格で売却したいと言われるがいらっしゃいます。

 一括査定における査定結果がどう考えても相場の3割以上も高いことがあります。このような場合、物件があるエリアの相場や付近の売物件情報を説明しても、大半の方は納得しません。

 「大手の不動産会社が付けた査定価格だから間違いないはずだ。」等と声高に主張される方が多いです。そして「その価格を超える価格で売り出したい。」と言います。

 希望通りの価格で売り出しても反響は全くありませんし、広告料の無駄になります。インターネットのポータルサイトにおける掲出料はタダと考えている方がとても多いのですが、かなり高額です。

 それに無謀と言える高値で売り出した場合、同じエリアの不動産会社から白眼視されます。不動産会社としては信用問題にかかわるので、相場からあまりにもかけ離れた価格で物件を売り出すことはできないのです。

 相場より何割も高い価格での売却は、相談されても「無理」な話です。

相場よりはるかに高額な査定を付けた不動産会社に売却を依頼した場合 

 一括査定で最も高い査定をした会社に売却を依頼したために起きた悲劇を紹介します。なお、プライバシーに配慮し、事案を多少修正しています。

 筆者の会社における査定結果を信用せず、一括査定サイトで最も高い価格を提示した会社に売却を依頼した方の話です。

事例

 A氏は一括査定サイトに査定を依頼しました。一番高い査定結果を付けたのは大手不動産会社Bでした。
 B社は大手なのでA氏は信用し、A氏はB社と媒介契約を締結しました。
 B社に販売活動を依頼してから1年経っても反響がなく、売り出し開始から2年以上が経ちました。「なかなか売れず、お困りでしょうから私の会社で買い取ります。大手でも売れない物件ですから、どこの不動産会社に依頼されても売れない物件だと思います。」と言われ、一括査定結果の半額(相場の約7割)で買い取られました。
 買い取り後、B社は相場通りの価格で物件を転売しました。利益は相場の3割です。仲介を依頼した場合の手数料は約3%なので、B社はその10倍近くの利益を得ることに成功しました。
 A氏は一括査定サイトを利用したばかりに、相場の7割で手放すことになりました。

 A氏は筆者の会社における査定に納得せず、B社に売却を依頼しました。B社は物件を転売しましたが、この転売先からA氏に関する話が伝わってきたので紹介しました。

 一括査定を行ったのが大手不動産会社であっても安心できないことを示す事例です。業界用語で言う「塩漬け」にあった事案です。