事故物件情報、投稿者が匿名の情報はあてにならない

 最近、「事故物件」というキーワードがよく知られてきました。法令により、住人等が不慮の死(殺人、自殺等)を遂げた住宅は、心理的瑕疵がある旨を告知しなければなりません。そして賃貸・売買物件のいずれであるかを問わず、賃料または売却価格を値下げして取引されることが多いです。

 事故物件に関する情報を取り纏めたWEBサイトとしては「大島てる」が有名です。こちらのサイトでは大都市だけではなく、全国および海外主要都市における事故物件情報を集め、Googleマップ上に掲出しています。

 このWEBサイトは作者に関する情報を公開しています。後述する、匿名の方が立ち上げているサイトではありません。「大島てる」のようなWEBサイトは、事故物件とは知らずに借りる(または購入する)ことの防止に役立っていると言えます。 

 残念ながら、オーナー様の中には事故物件であることを隠したがる方がたまにいらっしゃいます。大半の不動産会社では、事故物件であることを告知しないように要望されても「心理的瑕疵があるのに告知しないことは宅地建物取引業法違反です。仲介会社が処罰されるだけではなく、オーナー様も民事訴訟を提起され、損害賠償を請求されることになります。」等と告げているはずです。

 しかし、どうしても納得していただけないオーナー様がいらっしゃいます。それほど多くないと思われますが、不動産会社の中には「オーナー様には逆らえない」と考え、心理的瑕疵を告知しないところがあるようです。

 筆者の会社では、このようなオーナー様の物件に対する入居者募集(または売却依頼)は全て丁重にお断りしています。

投稿者が匿名である事故物件情報の信憑性

 マンション名や団地名と「事故物件」を併せて検索すると、事故物件情報がヒットすることがあります。匿名掲示板、まとめサイト、WEBサイト、ブログのいずれもあります。問題は、このような匿名の者が提供する情報を信用できるかです。

 知り合いの方から「自分が入居を検討しているマンションについて『飛び降りによる死亡事案が20件以上も発生している。』と記載し、いくつかの事案を取り上げているWEBサイトがあるが、真実か調べられないか。」という相談がありました。

 このWEBサイトの作者は匿名でした。しかも、掲載されている事故事案は「大島てる」に一件も掲載されていません。

 掲載されている事故事案を確認したところ、いくつかは存在しない階からの飛び降り事案でした。それに記載内容が真実であり、飛び降り自殺が20件以上も発生していれば住人は次々に退去し、空室だらけのはずです。しかし、実際は満室に近い状況でした。

 このWEBサイトではこのマンションを「多くの自殺者が発生している心霊スポットである」として紹介し、おどろおどろしい画像を数多く掲載していました。

 嫌悪感があまりにも酷いので、筆者はこのマンションに対する入居の阻止が、WEBサイトを立ち上げた目的であるように思いました。

 あくまでも筆者の想像ですが、執筆者は件のマンションとライバル関係にある、別のマンションのオーナーである可能性が高いです。近隣のライバル物件を貶め、自分のマンションを有利にするためにWEBサイトを立ち上げたのだと思われます。

 コロナ禍の長期化により収益用不動産が短期間に激増しました。このため、多くの賃貸マンションオーナーは厳しい競争に巻き込まれています。

 しかし、ライバルの関係にある他のマンションを事故物件であると記載したWEBサイトを立ち上げたオーナーは異常です。開設者の素性が判明した場合、損害賠償を請求される恐れがあります。発信者情報の開示請求訴訟を提起され、開示を命じる判決が出たらどうするつもりなのでしょうか? 困ったものです。

 匿名の作者が開設したWEBサイトやブログ、および匿名掲示板に掲載されている事故物件情報は信用できないとお考えください。