建物の新築後、検査済証を取得しないとどうなるか

 検査済証のない建物(アパート、1棟もののマンション、事業用ビルなどの収益用不動産、戸建住宅)が売られていることがあります。最近、筆者の会社の近くで売り出されている収益用1棟マンションも検査済証がありません。

 都市計画区域内で新たに建物を新築する場合は建築確認申請が必要です。都市計画区域外でも、アパートなどの収益用不動産を建築する際は条例により建築確認申請が必要になることがあります。

 建築確認申請は建物の建築前に特定行政庁または民間の指定確認検査機関(国土交通省または都道府県が指定)が行います。

 申請すると特定行政庁の担当者(建築主事)が現場を訪問し、申請の内容が正しいかを確認します。または、民間の指定確認検査機関(国土交通省または都道府県が指定)が審査および検査をして申請します。

 建築が許可され、建築工事が完了したら施主に引き渡す前に完了検査を受けることになります。この完了検査は特定行政庁の担当者(建築主事)または民間の指定確認検査機関が行います。建築確認申請の際に提出された図面および構造計算書を用い、申請された通りの建物であるかを確認します。さらに耐震性や避難経路が確保されているか等もチェックされます。

 建物を新築した際は、建築基準法第7条第1項により完了検査を受けなければならないとされています。また、民間の指定確認検査機関が完了検査を行えることは建築基準法第7条の2第1項が規定しています。

 完了検査は入居前に受ける必要があります。入居後に検査を受けることは認められていません。1棟ものの賃貸マンションやアパートの場合、1部屋でも入居者がいると検査を受けられなくなります。

 完了検査を受けない場合は罰則があり、一年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されます。

建築基準法

(建築物に関する完了検査)
第七条 建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
2 前項の規定による申請は、第六条第一項の規定による工事が完了した日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3 前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
4 建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の職員(以下この章において「建築主事等」という。)は、その申請を受理した日から七日以内に、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査しなければならない。
5 建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。

(国土交通大臣等の指定を受けた者による完了検査)
第七条の二 第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者が、第六条第一項の規定による工事の完了の日から四日が経過する日までに、当該工事に係る建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかの検査を引き受けた場合において、当該検査の引受けに係る工事が完了したときについては、前条第一項から第三項までの規定は、適用しない。

以下、略

 現在、建築確認申請は行ったものの、完了検査を受けていない建物が数多くあり、売り出されています。完了検査を受けない理由は、主に二つあると思われます。

①建築した建物が建築確認申請の際に提出した図面または構造計算書に記載されている通りではない。よくあるのは建築された建物の建蔽率、容積率が指定されている値をオーバーしている。

②収益用不動産の場合、一日でも早く入居者が欲しいとして完了検査前に入居させた。

完了検査を受けないことによる不利益

 「建物は建築確認申請しているので無届建築物ではなく、違法建築物ではない」と主張されるオーナー様が散見されます。しかし、完了検査を受けて検査済証の交付を受けていなければ、建築確認申請された通りの建物である保証は何もありません。

 このため、大半の金融機関は検査済証のない建物を「遵法性が担保されていない建物」と認識しています。すると、この建物に抵当権を設定して事業資金を借りようとしても金融機関から融資を断られることになります。

 また、建物を売却する際に購入希望者がローンを利用できないのでなかなか売却できないことになります。

 購入希望者がローンを利用して購入する場合は審査基準が緩いノンバンクを利用するしかありません。しかし、ノンバンクは利率が高く支払総額が過大になります。当該物件の立地が良くても購入を控えられることがよくあります。

 融資を受けず、現金一括による購入をしてくれる買主でないと購入できないので、売却にはかなりの日数を要します。そればかりか大幅な値引きを要求されることになります。

 完了検査を受けていない建物は、価値が大きく下がります。建築確認申請通りの建物を建て、完了検査を必ず受けることを強くお勧めします。