検査済証のない建物が多い理由

※昨日投稿した内容の続きです。

 最近、(建築確認)検査済証のない建物に関する相談があります。多いのは、売却を希望しているにもかかわらず買主がなかなか見つからないという相談です。

 前回投稿したとおり、最近は多くの金融機関が検査済証がない建物を「順法性(遵法性)が担保されていない建築物」と見做しています。このような建物は、売却したくても金融機関が買主に対する購入費用を融資しないのでなかなか売却出来ません。

 また、この建物に抵当権または根抵当権を設定し、融資を引き出して新たな事業を展開したくても、多くの金融機関は融資を断ります。

 建物の完成時に検査済証を取得しないと、多額の財産上の損害を被ると言えます。

なぜ、検査済証のない建物が多いのか(前回の投稿に関する詳細説明)

<その1>

 建築確認申請の内容とは異なる構造の建物を建築し、それを秘匿するために完了検査を受けないことがあるようです。建物の仕様が予め決まっているのであれば、その内容で建築確認申請を行い、完了検査を受ければ良いように思います。

 しかし、施主が部屋数を多くしたい等の理由で、指定容積率を超える建物の建築を希望することがあります。施工業者の態度として丁重に断れば良いように思います。しかし、「お客様の機嫌を損ねたくない」、「工賃を上げたい」として完了検査の省略を提案する施工業者が散見されます。

 このような状況が発生する理由ですが、「建築確認申請を行い、建築が認められれば違法建築物ではない」と誤解している方が多いことが挙げられます。完了検査を受けないと建築基準法違反として一年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に処せられます。しかし、罰則が規定されていることはほとんど周知されていないようです。

 また、行政は建築確認申請の有無のみをチェックし、完了検査はノーチェックにしがちであることも影響しています。これまでは完了検査が行われなくても建築基準法違反として通報・立件されることはほとんどありませんでした。多くの特定行政庁が、完了検査を事実上の野放し状態にしていたことも原因です。

<その2>

 施主が建物の早期利用開始を強く望んだことから完了検査が省略されるパターンがあります。収益用不動産として建築された1棟マンションやアパートのオーナー様は早期の客付けを希望します。1部屋でも入居者がいると完了検査は拒否されます。しかし、完了検査の終了を待っていられないとして賃借人を入居させてしまうことがあります。

 完了検査の有無は、賃貸借契約締結前に行われる重要事項説明における必須説明事項ではありません。このため、入居者の募集を依頼された不動産会社が完了検査の有無を問題にすることなく入居させてしまう場合があります。

 建物の順法性に関する問題は、建物のオーナー様と施工業者との間における問題です。入居者の募集を行う不動産会社にはこの点を確認する義務はなく、責任を負うことはありません。

 このようなパターンが発生する理由も「建築確認申請を行い、建築が認められれば違法建築物ではない」とか「罰則はない」と誤解している方が多いからであると思われます。