土地の境界標、むやみに抜いてはいけません

 よくある事例について紹介します。

 土地の所有者(以下A氏)が、土地を売却することにしました。隣地(所有者B)との境界について従来から争いがあります。以前、B氏がA氏に断りなく境界標を設置し、この境界標を基準とした境界線を主張しています。
 しかし、A氏は境界標の位置が異なると主張しています。境界を画定するための話し合いを行いましたが、互いの主張は平行線です。
 A氏が土地を売却するにあたり、境界線の位置が問題になりました。A氏は「B氏が設置した境界標は自分の承諾なく勝手に設置したものなので撤去しても構わないはずだ。」と考え、引き抜いて処分しました。
 B氏が激怒し、収拾が付かなくなっています。

 隣地の所有者が承諾なく勝手に設置した境界標であっても、勝手に撤去すると刑法の境界損壊罪に問われます。

刑法

(境界損壊)
第二百六十二条の二 境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 刑法犯であり、規定されている刑罰はかなり重いです。有罪が確定したら前科が付きます。自分の承諾を得ずに勝手に設置された境界標であろうと、境界の位置が異なると認識していたとしても、引き抜きは犯罪です。

 境界が異なると認識している場合は土地家屋調査士に相談することをお勧めします。多くの場合、再測量による解決を図ることになると思います。しかし、測量で解決できない場合は法務局が行う筆界特定制度または境界確定訴訟で決着を付けることがあります。

 なお、境界標や境界の位置が自分の認識と異なる場合、長期間放置すると取得時効にかかり、土地の権利を失うことがあります。このような場合は早めに土地家屋調査士に相談することをお勧めします。