サブリース契約について

 収益用不動産(アパート、1棟マンション、賃貸用区分マンション等)のオーナー様から、サブリース管理に関する相談を受けることがあります。

 前回投稿したとおり、職人が極端に不足していることからリフォーム工事の遅れが顕著です。前の賃借人が退去した後のリフォームが遅れ、入居できるのが4月以降になった物件が数多くあります。1~3月の繁忙期を過ぎると、交通が至便で築浅である等の物件を除き、次の入居者はなかなか決まりません。加えて少子化の進行、景気の悪化等も次の入居者が決まらない原因です。

 このため、サブリースによる管理を引き受けられないかとの相談を受けることがあります。サブリースによる管理を依頼した場合、オーナー様は空室があっても家賃相場の約8割を得られるからです(後述する例外あり)。

 しかし、賃貸物件におけるサブリース契約は慎重に行うべきです。サブリース契約の内容をよく知らずに契約するオーナー様が大変に多いのが実情です。

採算性に関する十分な検証が必要

 現在、収益用不動産の利回りが著しく低下しています。都心では表面利回り5%未満の物件が多い状況です。サブリース契約の締結により家賃収入が約8割にまで低下すると、いわゆる「手出し」が必要になる恐れがあります。

 事業用ローンにより収益用不動産を購入している場合、サブリース契約締結により貯金を毎月切り崩す必要が生じることがあります。このため、サブリース契約の締結を検討する際は採算性に関する十分な検討が必要です。

簡単に解約できず、どうしても解約したい場合は違約金が必要

 サブリース契約の内容は実質的に普通賃貸借契約です。借地借家法により、普通賃貸借契約をオーナー様が解約するには正当事由が必要とされています。

 正当事由であると認められるための要件はかなり厳しく、サブリース業者による賃料不払い継続等の事情がなければ認められません。正当事由があると認められない場合は多額の違約金を支払う必要があります。

契約書の精査が必要

 サブリース契約を締結している場合でも、設備が故障した際の修繕費や大規模修繕(外壁塗装等)の費用はオーナー様負担です。問題は、サブリース事業者が指定する事業者以外の工事業者を利用することを契約書の特約条項が禁止していることが多いことです。

 サブリース事業者が指定する工事業者における工事料金が相場の2~4倍であることがよくあります。さらにオーナー様が他の工事業者を利用した場合は多額の違約金が必要とされていることがあります。工事費の差額は、多くがリベートとしてサブリース事業者に渡されます。

 工事業者指定に関する特約条項が記載されていた場合、特約から外すことを求めるべきです。サブリース事業者が拒否する場合は、その業者とは契約しないことを強くお勧めします。

 最近、空室が発生した際は、次の入居者が決まるまで当該空室に対する賃料を支払わないとする特約を入れる事業者があります。これでは何のためにサブリース契約を締結するのかわかりません。

サブリース契約を締結した物件を売却する際は、売却価格が約2割減少する

 収益用不動産の価格は利回りにより決定します。サブリース契約により賃料収入が相場の約8割である物件は、サブリース契約がない同グレードの物件より約2割安く評価されます。

 売却のためにサブリース契約を解約したいと思っても、その際は多額の違約金が必要になります。金額は物件の規模などにより異なりますが、1,000万円を超えることがあります。

まとめ

 サブリース契約を締結する場合、オーナー様は契約書を熟読する必要があります。悪徳事業者が数多く跋扈しているので契約書を提示されたその場で署名、捺印することはお勧めしません。事前に契約書の案を入手し、納得してから契約することをお勧めします。特に注意が必要なのは特約条項と違約金の金額です。

 空室がなかなか解消されず、サブリース契約の締結により「手出し」が必要になる物件は、売却も検討するべきです。