東京都国立市の新築マンション、引渡し直前に解体へ

 積水ハウスが東京都国立市内に建設した10階建の新築マンションが、解体されることになりました。マンション名は「グランドメゾン国立富士見通り」です。購入者に対する引渡し直前の段階であるにもかかわらず、積水ハウス幹部の判断により解体されることになったようです。

 解体の理由は、近隣住民が富士山を眺める際に支障が生じるというものです。法令や条例等の違反、マンションの構造等に関する問題ではないとのことです。

 前面道路の名称は「富士見通り」です。道路上から富士山を眺められることからこの名称が付いたものと思われます。確かに富士山を眺められなくなると、「富士見通り」の名称が泣く事態になります。

 マンションの設計、建設に向けた手続は建築基準法などの法令、市の条例に沿って行われました。近隣住民に対する説明会も開催された上で建設されており、合法です。このため、積水ハウスが予定通り分譲しても国立市や近隣住民が差し止めることは出来ません。

 しかし、積水ハウスはマンションの解体を決めました。

理由はReputation Riskのみ?

 「富士見通りと命名されている道路沿いに建設されたマンションにより富士山が見えなくなった。」という風評が立ち、今後数十年以上もこの状況が継続すると、確かにマンションディベロッパーのイメージダウンにつながります。 

 マンションを新築する際に近隣住民による反対運動はよく生じます。マンションディベロッパーの担当者は近隣住民と調整を重ねます。しかし、マンションの建設計画が合法であれば、住民の要望により計画を一部変更する程度で建設に着手することが大半です。

 今回の事案では建物が完成し、引渡し直前でマンションを解体することになりました。莫大な建設費が無駄になり、解体費用も発生します。購入希望者(契約者)に対する違約金(手付損倍返しの場合、販売価格の1割)も必要です。株主総会において問題になることは避けられないでしょう。それにもかかわらず解体が決まりました。大きな驚きであり、おそらく前例がない異様な対応です。

 積水ハウスのWEBサイトおよび報道によると、会社幹部による鶴の一声により解体が決まったとのことです。しかし、建築計画を中止するために必要な費用が莫大すぎます。

 解体を決めた理由は積水ハウスのHPに記載されています。しかし、これだけでは「Reputation Riskだけではなく、近隣住民の反対がかなり激しいからではないか。」と勘ぐる方が多いと思います。

 多くの方から「近隣住民の反対によりマンションの建設を中止した前例」と捉えられた場合、各地で混乱が発生することが危惧されます。