家賃を滞納する賃借人に対する対応(その2)

※前回投稿した内容の続きです。

家賃保証会社による家賃保証契約が締結されている場合

 基本的に、家賃保証会社に対応を任せて構わないと考えられます。滞納された家賃は家賃保証会社が代位弁済をしてくれます。

 家賃保証契約には家賃滞納を継続する賃借人への対応に関する条項があり、退去に向けた対応も含まれるのが通常です。家賃保証会社が賃借人の退去に向けた様々な交渉の代行をしてくれることが多いです。

 交渉で解決できず、明け渡しを求める裁判を提起する場合は弁護士の選任および訴訟手続に関する助言を受けられます。

 家賃保証会社は、家賃の滞納が発生するとオーナーに対し代位弁済をしなければなりません。長期間の家賃滞納が放置されると経営破綻につながるので真剣に対応してもらえることが多いです。

家賃保証契約が締結されておらず、連帯保証人が無資力に陥っている場合

 賃借人が家賃を滞納し、連帯保証人が無資力である場合、実力行使をして早期の解決を図りたいと考えるオーナー様は多いです。

 確かに家賃滞納を継続している賃借人が退去しない場合、いずれは退去してもらうことを考えておく必要があります。しかし、前回の投稿に記載した通り、賃借人に対する暴行・脅迫、私物の搬出、鍵の交換は悪手です。

 管理会社が「賃借人に対する暴力行為」、「力ずくでの追い出し」、「鍵の交換」等を提案することがあります。しかし、これらの提案に応じると、オーナーが暴行・傷害、窃盗、住居侵入の共犯と見做され、処罰される恐れがあります。

 特に「力ずくでの追い出し」は要注意です。このような「追い出し」は反社会的勢力の構成員が請け負っていることがよくあります。うっかり利用すると反社会的勢力からの上納金請求、脅迫等に繋がります。

 これらの行為を行われることをオーナーが管理会社から事前に知らされていた場合、「共犯」として処罰される恐れがあります。管理会社がこれらの提案をした場合は、当該管理会社への管理委託契約を解約することをお勧めします。

 管理会社が賃借人に対し何らかのアクションを執る旨の連絡があった際は直ちに内容を確認する必要があります。場合により断ることをお勧めします。 

 最終的には明け渡し請求訴訟を提起し、明け渡しを認める判決を得た後に強制執行により退去させることが必要になることがあります。

 通常、訴状を裁判所が受理してくれるためには3か月以上継続した家賃滞納案件である必要があります。判決が確定し、強制執行が終わるまでには8~10か月程度を要することが多く、その間は家賃を得られません。裁判は長期間を要するので、2か月程度の滞納でも弁護士に相談しておくことをお勧めします。

 強制執行(断行)まで行うと多額の費用が必要です。ワンルームまたは1Kの貸室でも弁護士費用、裁判費用、強制執行費用等で100~150万円程度の費用が発生するのが通常です。

賃貸借契約の際は、家賃保証契約が必須

 コロナ禍後の不況は深刻であり、連帯保証人が無資力に陥り、代位弁済を受けられない事案が増えています。このため、賃貸借契約を締結する際は賃借人と家賃保証会社との間に家賃保証契約を締結してもらうことが必須です。

 家賃保証契約を締結する際は家賃保証会社による審査が必要です。この審査をもって入居の可否を決定するオーナーが増えています。

 ちなみに家賃保証契約を締結する際は、オーナーが不動産会社であるか、不動産会社が仲介している物件であることが必要です。宅地建物取引業ではないオーナーが、不動産会社を通さず一般の方と賃貸借契約を締結する場合は、家賃保証契約を締結できません。

 このため、物件を借りたい方がオーナーを訪問し「仲介手数料を節約するために不動産会社を通さずに賃貸借契約を締結したい。」と言われたらその場で断るべきです。