収益用不動産の購入、満室時想定表面利回りで決めてはダメ

 収益用不動産(1棟マンション、アパート、賃貸用戸建住宅)を購入する場合、どうしても満室時の想定利回りに目が行きます。利回りを極限まで追求したいとして、満室時想定表面利回りのみで物件購入の可否を判断しようとするお客様がいらっしゃいます。

 現在、東京都23区内で満室時想定表面利回り5.5%超の物件を見つけることはかなり難しくなっています。しかし、都内の多摩地区、千葉県、埼玉県、神奈川県西部では7~10%超の物件が見つかることがあります。

満室時想定表面利回りの良さだけで決めるのは悪手

 満室時想定表面利回りが良好でも、それが良い物件であるとは限りません。満室時想定表面利回りのみではなく、現在の利回り(実質利回り)の確認が必須です。

 空室がある場合、その部屋がいつから空室なのかを確認する必要があります。空室期間が長期化している場合、その原因がオーナーによる設備故障の放置であることがあります。この場合は設備の故障を修理することにより入居者が早く決まる可能性があります。

 しかし、貸室をリフォームし、ハウスクリーニング等も行き届いているのに長期間空室であることがあります。この場合は立地が良くないか、近隣の賃貸物件との競合が考えられます。または人口が少なく賃貸需要が低いエリアなのかもしれません。

 郊外の場合、物件の敷地内または近くに駐車場があることが必須です。駐車スペースがないと入居希望者はなかなか現れません。

 現在、高速インターネット回線(光回線)の導入は必須であり、これがないと空室期間が長期化します。光回線が導入されていないエリアにある物件の購入はお勧めできません。特に郊外の賃貸用戸建住宅は要注意です。

 現在入居している賃借人の属性、家賃、契約期間はレントロールを確認すればわかります。

見落としがちなのは、賃借人が家賃保証会社との間に家賃保証契約を締結しているか

 契約開始時期が2020年4月以降の賃貸借契約では、ほとんどの場合に家賃保証契約が締結されています。2020年4月以降に更新(法定更新を除く)された賃貸借契約も同様です。

 民法の一部改正により、2020年4月以降、連帯保証人になる方に対し連帯保証の極度額を通知しなければならなくなりました。東京都23区内の場合、極度額は家賃(管理費を含む)24か月分です。かなり大きな金額なので連帯保証人になろうとする方が激減し、家賃保証会社の利用が推進されました。現在、大半の賃貸物件において賃借人が家賃保証会社との間に家賃保証契約を締結することが求められています。

 現在、コロナ禍の長期化等により無資力に陥った連帯保証人が数多く存在します。このため、賃借人が家賃を滞納した際にオーナーが連帯保証人による代位弁済を受けられない事案が増えています。

 しかし、家賃保証契約があれば、家賃の滞納が発生しても家賃保証会社による代位弁済が行われます。賃借人に退去を求める場合でも家賃保証会社がオーナーに代位して退去手続を進めてくれることが多いので安心です。

 なお、2020年3月以前に賃貸借契約が締結され、その後の契約更新が法定更新である貸室がある場合は要注意です。多くの場合に家賃保証会社と賃借人との間による家賃保証契約が締結されていないからです。このような貸室における賃借人が家賃を滞納し、連帯保証人が無資力に陥っていると代位弁済を受けられません。 

 多くの入居者(賃借人)が家賃保証契約を締結しているかについても購入の可否を判断する際に確認するべきポイントです。